スミルノフ教授公式ウェッブサイト> 実況!麻酔専門医試験口頭試問>「かば」さん
最終更新:2007年10月08日
試験日は10月5日、口頭試問の初日でした。集合時間は12時40分でしたので、ホテルをチェックアウトした後、どこで時間をつぶすか、かなりもて余しました。試験直前は勉強をしない主義なのですが、ロビーでぱらぱらと始業点検を眺めたり、瞑想したりしました。待機部屋には何時から入れるのでしょうか。
待機部屋の指定の席は、大きく3つに分けられていました。口頭試問30分、実技30分で、30分ごとに順に移動していくと、丁度グループ分けの予定の2時間で終わる計算です。自分は最初のグループだったので、待つことなく移動しました。
試験の部屋の前で、問題用紙を渡されました。5分間は、あっという間だろうと思ったので、まず、ざっと目を通して、過去問から想定される質問の答え(術前検査など)を列挙していきました。(書き殴ったせいで、想定通りの質問があったにもかかわらず、答えられなかったものがありました。反省。)
時間になり、部屋に通されました。挨拶をし、席に着くように促されたので、着席しました。
試験官A:「口頭試問では、症例問題2問と、セツグウ問題があります。」
私:「はい。(セツグウ?セツグウってなんぞや?)」
症例1
70歳女性、体格は普通(体重50kg台)、S状結腸癌に対し、S状結腸切除が予定された。肝機能障害があり、腹水あり、plt 6万、alb 2.5g/dl、PT 18s(?)、PT-INR 2.0など
試験官A:「では、この症例の問題点をあげてください。」
私:「70歳と高齢であること、肝機能障害があり、血小板が低下していること、アルブミンが低いこと、PTが延長しており、凝固異常がみられることに加えて、手術術式が出血が多くなる可能性があることです。」
試験官A:「では、この方の術前評価としてどのような検査を行いますか。」
私:「CBCで貧血と、一般的なスクリーニングの生化学ではbil,GOT,GPT…」
試験官A:「ああ、肝機能検査に絞ってお願いします。」
私:「(がーん。そうですね。)…えーと、ICG15、アンモニア、Ch-E、enhance CTもするでしょうから、それで食道静脈瘤などが疑われる時は内視鏡も。(←すでにこの時点でメモは役立っていない)」
試験官A:「肝機能の評価の分類で有名なのがありましたね?」
私:「childの分類ですか?(混乱気味、本当にこれだけでいいのだろうか…)」
試験官A:「そうですね。では、麻酔はどのようにしますか?」
私:「前投薬は行っていません。導入はチオペンタール、ベクロニウム、フェンタニルで、術中の維持はAirと酸素とセボフルランで、適宜フェンタニルとベクロニウムを追加します。」
試験官A:「硬膜外麻酔は行わないのですか?」
私:「この場合は、PT-INR 2.0と凝固異常がありますし…」
試験官A:「では、術中管理でどのようなことに気をつけますか?特に薬剤の投与など。」
私:「循環動態を安定させ、肝血流を保つことと、分布容積が大きくなって、最初の薬剤投与が沢山いるかもしれないことと、代謝の障害などで、薬が、特にベクロニウムが遷延することです。」
試験官A:「プロポフォールの代謝はどうですか?」
私:「…比較的、末期まで代謝は保たれます。(←いまいち自信がない)」
試験官A:「レミフェンタニルは?」
私:「代謝は保たれます。」
試験官A:「セボフルランの使用についてはどうですか。研修医に質問されて答えるつもりで。」
私:「(何故に突然、研修医!?)用量に依存して、肝血流を減らしますが、一般的な臨床使用濃度で安全に使用されています。(答えになってるんだろうか)」
試験官A:「術後の鎮痛はどのようなものがありますか?(←どうしますか、ではなく、このように質問されました)」
私:「フェンタニル持続静注、私は個人的に少量のケタミンを足したりします。NSAIDSを使う先生もいるかもしれませんが、肝障害は禁忌の項目になるので、私は使いません。」
試験官A:「投与量はどれくらい行きますか。」
私:「えーと…、0.5-0.7μg/kg/hrくらいです。術中にしっかりとフェンタニルを投与しておきます。(試験官うなずかれる。)」
試験官A:「ところで、モルヒネを静注する場合は、どれくらい使いますか?」
私:「えー…、使ったことはないので、よくわからないのですが…(←と、自分のフェンタニルの用量や、硬膜外モルヒネなどから計算)、一日50-100mgくらいでしょうか?」
試験官A:「はは、だいぶ差がありますねぇ。」
私:「はい…。」
試験官A:「術後、覚醒遅延が起こったとして、どのような原因を考えますか?」
私:「薬剤の遷延、この場合は鎮静薬、筋弛緩薬、麻薬、それと、低酸素血症、低換気、高CO2血症、あ、これは低換気に含めますね…、貧血、電解質異常、肝機能の悪化、腎機能障害などによる代謝異常、…あと、脳血管障害(アシドーシス、血糖の異常、循環動態不安定等々が出てこず。いつも研修医に偉そうに講釈たれてるのに…反省。)」
試験官A:「では、私はこの症例の質問を終わりますが、試験官B先生は何かございますか?」
試験官B:「いえ、特にありません。次の症例に移りましょうか。」
症例2
満期産1ヶ月の男児、身長60cm、体重3.5kg、1週間ほど嘔吐が続くと言うことで、肥厚性幽門狭窄症の診断で手術が予定された。
試験官B:「では、手術の時期はどうしますか?(唐突に感じました)」
私:「えっ?」
試験官B:「入院してすぐに手術と言うわけではなかったですね。」
私:「はい。点滴で、嘔吐による脱水や電解質の異常を補正して、状態が落ち着いてから手術をします。(そうは言っても、自分の所に話がくるときは、常に緊急手術だったけど)」
試験官B:「術前にどのようなことを調べますか?」
私:「全身の理学所見から、元気さや、脱水の状態を、turgorなどですね。それと、できれば採血をして、CBCと電解質異常などを調べます。」
試験官B:「そうですね。電解質異常や酸塩基平衡では、具体的にどのような異常となりますか?」
私:「(酸塩基平衡か!考えてなかった…)えーと…、嘔吐による代謝性のアルカローシスと、電解質では低Na、低Cl、低Kです。」
試験官B:「では、それをどのように補正しますか?」
私:「まず、生理食塩水で脱水を補正して、Na,Clが補正されたら、カリウムの投与について考慮します。」
試験官B:「具体的に、電解質の補正の基準値などについて、何か知っていますか?」
私:「…。(基準?基準?)…わかりません。」
試験官B:「そうですか…。それでは、麻酔はどのようにしますか。」
私:「(基準値が頭から離れない。Naの急速補正による脱髄の話かな…?)病棟から点滴を入れてきて、急速導入で行います。入室時に硫アトを0.1mg投与して…、あ、病棟であらかじめNGを入れてきて胃内容を吸引します。」
試験官B:「(うなずきながら)それは通常、病棟で既に入ってますね。」
私:「はい。チオペンタール20mg、ベクロニウム0.5mgを投与し、マスク換気はできれば行いたくないのですが、小さいのでSpO2が下がってしまうので、cricoid pressureを行ってもらいながら、圧をあげないように軽くマスク換気を行います。維持はAirと酸素とセボフルランで行います。」
試験官B:「awake intubationは行いますか?(なんと、露骨な誘導!)」
私:「ぐったりしていれば行うこともありますが、1ヶ月くらいになってくると結構抵抗されてしまうので、行いません。(←私は、のつもり。後で考えると全く伝わっていませんね。)」
廊下では、awakeについてもあれこれ考えてましたが、完全に舞い上がっていました。研修医の時の失敗した思い出から、rapid inductionがベストと思っているので、あのような回答になってしまいました。
試験官B:「術後鎮痛はどうしますか?」
私:「…えーと…(どうしてたかな?)NSAIDSとか…」
試験官A&B:「えぇっ?」
私:「あ、いえ、ではなくて、アンヒバを10mg/kgくらい」
試験官B:「アンヒバではなくて一般名で」
私:「アセトアミノフェンです。手術を始める前に、挿肛してます。」
試験官B:「いいですねぇ。Pre-emptive analgesiaですね。では、内科的な治療はどうですか?」
私:「(えぇー?術前補正のこと?さっき言ったじゃん。)えー、輸液をして電解質を補正して…」
試験官B:「そうではなくて、手術をせずに、保存的にみるのに、何か薬剤がありませんか?」
私:「わかりません。」
試験官B:「硫酸アトロピンを投与して、保存的に診れるかもしれないと言うのがありますね。」
私:「…。(知りませんでした)」
試験官B:「では、この子が術後に無呼吸発作を起こしたとしましょう。対処法として、どのようなものがありますか。」
私:「SpO2などのモニターでしっかり監視をすることと、マスク換気や、えーと、あと薬剤ではネオフィリンでしたっけ?(←また、また、自信がないのに適当なことを言ってしまう)」
試験官B:「えぇ?ネオフィリンなんか投与するのー?では、無呼吸発作のリスクとなるものをあげてください。」
私:「在胎週数から数えて40週未満でしたっけ?(←自信がない)」
試験官B:「40週だったっけ(と、なにか、問題冊子をめくっている)」
私:「と、麻薬の使用と」
試験官B:「そうですね。」
私:「えーと、腹臥位とか…(←また、適当なことを…)」
試験官B:「えぇーっ?腹臥位で寝かせるの?」
私:「いえ、仰臥位で寝かせます。(もう、めちゃくちゃなのを自覚しているので、セルフコントロール(?)目的で、強引にまとめちゃえ)とにかく、しっかり監視をして、無呼吸発作がおこったら、刺激して呼吸を促して、それでも戻らなければ、マスク換気をするんですっ!」
試験官B:「そうですね。では、これで2例目を終わります。」
試験官A:「それでは、今年から接遇問題が行われることになったのですが、これは医学的な知識を見るものではなく、患者さんへの対応などをみるものです。試験官Bを患者の夫の○○さんと言う設定で、気管挿管の合併症について説明をしてください。○○さんがすでに待っていて、先生が入ってくると言う設定で、入り口から入ってきてください。」
私:「(歩いて近づきながら)お待たせしてすみません…(こんな心の準備ができていない状態でムンテラに臨んだりしないんだけどなぁ)」
この後、自己紹介をして、相手を確認して、相手の意向を確認して、因果を含めて合併症をいくつか説明しました。
試験官B:「で、妻は助かりますか」
私:「それは、なんとも言えないですが…」
と、この後、できるだけ頑張るような話をして、話が途切れる。
私:「…(沈黙)…、以上でよろしかったでしょうか?」
試験官B:「はい。」
試験官A:「最後の以上でよろしかったでしょうかと言うのは、患者さんに対して言ったのですか?試験官に対して確認で言ったのですか?」
私:「患者に対して、確認のつもりで言いました。」
試験官A:「先生、普段はちゃんとされていると思いますが、患者の理解を確かめるようにするのと、「何か質問はありませんか」というように訊ねないと。」
私:「はい。すみません。」
夢中で時間を気にしていませんでしたが、ここまでで20分弱だったようです。時間が余ったらしく、ピロステの症例数について聞かれ(3−4例)、ピロステについてもっと勉強するようにとか、出身大学とか勤務地とか、接遇問題は学会のweb siteでアナウンスされたらしいけど知っていたか、などのお話がありました。
この後、実技は、フルストマックの麻酔導入、カプノメーター、術中Vf→PSVTの蘇生、CVCをしました。喋りながら心マは無理なのでかなり途切れていましたけど、多分いいですよね。退室直後に、上着を忘れたのに気づいて、慌てて戻りました。
自分ではそつなくこなしたと思いますし(ホントかな?)、ここまで書くのに体力を使い果たしたので、私の体験記はこれで終わりとさせて頂きます。
私からのアドバイスとしては、皆さん書かれていることですが、平常を保つのはかなり難しいです。私は、始業点検に加えて、近年話題のガイドラインズ(心疾患、PE、産科、局麻など)を頑張って覚えていたのですが、ヤマをはずしました。結局、日々の症例で担当したときに網羅的に勉強していかないといけないと痛感したのと、研修医や学生相手に、「ただぼけっと突っ立ってたり、条件反射で何かしてるように見えても、○○とか○○とか○○とか、色々考えて鑑別したりしてるんだよー」って喋っていくのが、試問の練習になるかなと思いました。
最後まで読んで頂いた皆様、ありがとうございます。これから受験される先生方も試験頑張ってください。