スミルノフ教授公式ウェッブサイト>実況!麻酔指導医試験口頭試問>らりんごさん
最終更新:2003年7月20日
2001年○月○日金曜日、口頭試問の日。遅れないようドキドキしながら会場となる東京有楽町の東京フォーラムのガラス棟に到着。午前中は48人が二組にわかれて受験、午後も同人数であった。同時刻には別 棟で筆記試験が行われている。ということは、この96人は以前に筆記に合格した人たちということになる。
われわれ24人は○号室が待機場所となった。もちろん知り合いはいない。部屋には机といすが用意され8人づつ、座らされた。同部屋には若者の男性3人、女の子ひとりが試験部屋までの案内のために待機していた。どうやら彼らは麻酔学会にやとわれた学生アルバイトであることが判明。集合時刻の8時40分になると、説明が開始された。受験生は、30分づつ、2つの部屋で面 接を受けることになる。一つ目の部屋では約20分の臨床問題と10分のコンサルテーション問題について質問される。どこぞのエライ先生二人を前に机をはさんでこちらは一人きり、30分間は援軍もなく、逃げることもできないので緊張するのはいたしかたないか・・・。
30分たつと次の間に通される。こちらは実技で、やはり試験官二人に対して受験生はひとり、時間は30分である。9時から始まる試験に対して最初の8人が8時50分に試験会場に連れ去られていった。次の8人は9時20分に拉致されていった。最終組の私は9時50分まで待機室にいることに・・・。ま、でも本を読んで読んでいても寝ていてもトイレに行ってもいいのでちょっとほっとする。でも、異様な雰囲気であることには間違いない。
9時50分、ショートカットのかわいい女の子に連れられて試験室に向かう。どうせならもっといいところに連れて行って欲しいのだが、今は仕方がない。どうやら麻酔学会職員のツテで雇ってもらった学生アルバイト嬢とのこと。部屋の前で彼女とさよならし、イスに座って数分間渡された臨床問題の紙を読むことになる。
さあ、はじまりだ。
症例1:65才男性、170cm、65kg。右S2の肺癌のため切除術が予定された。喫煙歴40本30年。日常生活に支障はない。既往歴に15年前から糖尿病があり経口血糖降下剤を服用している。呼吸機能検査で%VCが105%、FEV1.0%が65%であった。血液ガス分析ではルームエアでPaO2が65、PaCO2が40であった。
(ああ、よかった普通の問題で・・・。)やがて部屋に通される。挨拶の後にイスに座って2人の試験官と対峙することになる。とはいうものの、この部屋の試験官はふたりとも優しくていやみのない、いい先生であった。試:まず、この患者さんの問題点を挙げてください。
私:まず、喫煙歴が長く、本数も多いことから、術中の酸素化低下、痰の増大、術後の呼吸器合併症などが考えられます。次に15年来の糖尿病ということから全身性の血管病変が進んでいる可能性があります。例えば心臓、脳、末梢血管などです。それか ら、腎障害が出ている可能性もあります。
試:こういう、呼吸器病変がある患者さんなどはADLが制限されることがあると思いますが、その分類にどんなものがありますか?なんかこう、人の名前がついていたりするのがあるのですが。
私:ヒュージョーンズの分類です。(採点用紙らしきものに丸をつけている。)
試:そうですね。では、この患者さんは分類では何度ですか?
私:健康人と同じADLなので1度です。
試:そうですね。では、アメリカ麻酔学会のASA分類、PSでは?
私:DMがあるので2度です。(また、丸をつけている。いいぞいいぞ、もっとつけてくれぇ。)
試:麻酔はどのようにしますか?
私:術後の鎮痛のために硬膜外をいれて吸入麻酔にすると思います。
試:吸入麻酔にするのはなぜですか?
私:あ、あのー、プロポフォールでもいいのですが鎮痛効果もないし・・・。
試:吸入麻酔に慣れているからということですね。
私:そ、そうです。(ホッ・・・)
試:ところで硬膜外はどこから入れますか?
私:Th4から8の間くらいでしょうか。
試:ずいぶん範囲が広いですけどそれはなんでですか?
私:皮切がどこかということで術者に相談してということで・・・。
試:ああ、そういうことですか。で、術中硬膜外には何をいれますか?
私:1%カルボカインをいれると思います。
試:術前の呼吸器管理としてはどのようなことをして欲しいですか?
私:まず、禁煙です。それから、気道の清浄化、感染を伴っているようでしたら、その治療、また、トリフローなどの呼吸機能訓練もしていただけたらと思います。
試:喫煙によるデメリットはどのようなものがありますか?
私:気道内分泌物の増加、それによる無気肺、COヘモグロビンが増加することによる酸素結合能の低下が挙げられます。
試:その他はどうですか?
私:ん?(何があったっけ?沈黙約30秒。)
試:気道の線毛運動はどうですか。
私:あ、低下します。それによって喀出は悪くなります。(ホッ)
試:まあ、当たり前のことですけどね。では、気道確保はどのようにしますか?
私:右肺をつぶす必要があるのでブロンコキャスなどを使って分離肺換気にします。試:そうですね。サイズはどうしますか?
私:男性であり37か39を使うと思います。
試:たいていのこういう分離肺換気の症例では右肺の場合であっても左肺の場合であっても左用のブロンコキャスで、できますよね。(うんうん、そうですね。)ところが、どうしても左用ではできない手術もあります。さて、どんな手術でしょう?
私:えっ?(なんだろう?わからないよう。この後、沈黙が1分。どうしようどうしよう。気まずいよう。)
試:左肺の全摘などがそうですね。(なぁんだ)左の主気管支をいじるような。(助け船ありがとう、先生。)
私:あ、左スリーブ切除などもそうですね。
試:そうです。では、この患者さんで術中に酸素飽和度が下がったらどうしますか?私:まず、麻酔器から挿管チューブまでの折れ曲がり、抜けなどのトラブルがないか確かめます。痰による閉塞がないかどうかも吸引して調べます。更にファイバーでもチューブの位 置が正しいか確認します。
試:チューブの位置はどうやって調べますか?
私:ファイバーでメインの方からのぞきます。左気管支から青カフがわずかにのぞいているくらいがちょうどいいです。
試:では、それでも酸素飽和度が下がってきました。どうしますか?
私:純酸素にするとともに、術野をみて何か異変がないかどうかみます。で、術者に進言し手を休めてもらいます。また、一時的に両肺換気をさせてもらいます。
試:こういう患者さんではつぶした方の肺はなにかしますか?
私:術者のじゃまにならない程度に低流量の酸素を流すこともあります。
試:ところで、DMがありますけど術中管理には何を気をつけますか?
私:はい、細胞内飢餓がおこらないようにということです。
試:具体的には?
私:はい、尿中ケトンを調べます。
試:血糖コントロールはどうしますか?
私:術中はインスリンを5g1単位程度から連続静注で使い始めます。
試:どのくらいの血糖値を目指しますか?
私:サージカルゾーンつまり250以下です。
試:術後の鎮痛ですがどのようにしますか?
私:エピが入っていればそこから局麻、麻薬を使用します。
試:何をどのように使いますか。
私:局麻は0.25%マーカインを時間2程度から、そしてフェンタもしくは塩モヒを一日4mg程度。
試:モヒの副作用にはどのようなものがありますか?
私:ヒスタミン遊離による喘息発作、掻痒感、悪心、眠気、呼吸抑制が挙げられます。
試:呼吸抑制がでてきたらどうしますか?
私:まずは、エピの塩モヒの副作用を疑って中止します。で呼吸抑制に対してはナロキソンを使います。
試:どのように使いますか?(あれ?なんかスーミーどののHPにもこんな質問の場面 があったような・・・)
私:ワンショットで0.02mgくらいから使用します。
試:それでも、呼吸抑制が続くようならどうしますか?(きたきた、持続静注って答えて欲しいんでしょ?)
私:ナロキソンの持続静注もよいかと思います。(試験官が大きく、しかも何度もうなずいている。)
試:そうですね。結構です。(やったぜ。この先生のことだったのか。スーミーどの、ありがとう。)
試:では続きましてコンサルテーション問題です。これを読んでください。(と、症例を渡される。)
症例2:25才女性、160cm、45kg。整形外科にて半月板切除術を行ったがその際の硬膜外麻酔の際に硬膜穿刺をしてしまったという。術後4日経っているが患者はまだ、頭痛を訴えている。
硬膜穿刺後頭痛
試:さて、この症例について頭痛の特徴を教えてください。
私:はい、体位変換による頭痛の悪化が特徴のひとつです。臥位から座位 、立位になったときに増悪します。
試:なんで、頭痛が起こるのですか?
私:開いてしまった穴から髄液が漏出してそれによってくも膜が牽引されて疼痛が起こります。
試:では、治療はどうしますか?
私:まずは、安静および輸液を多くすることが挙げられます。これでもだめなら硬膜外に生理食塩水を注入するとかブラッドパッチを当てる方法もあるようですが私には経験がありません。
試:NSAIDなどの鎮痛剤は使わないのですか。
私:あ、はい、使います。
試:ま、当たり前すぎるのですが、そういうのも答えてくださいね。ところで、整形外科医には、痛みがどのくらい持続するといいますか?
私:通常1週間程度、長いときにはさらに延長することがあります。
試:パンしたときに頭痛が悪化する要因はなにがありますか?
私:はい、針が太いほど断面積が大きくなり髄液の漏出も多くなると思います。
試:針の形とかはどうですか?
私:ツーイ針だと開いた断面積は大きくなると思いますが。
試:ペンシルポイントなんかだとどうでしょう。
私:あ、少なくなると思います。
試:さて、ブラッドパッチをするとして患者さんが宗教的に輸血を拒否する人だったらどう説明しますか?(いったい、何を求めてるの?)
私:NSAID、輸液、生理食塩水の方法を説明してからブラッドパッチの話をすると思います。
試:はい、結構です。どうも御苦労様でした。
(ふう、終わった終わった。)次は実技じゃぁ。失礼しまぁす。・・・次の試験室に入るといやでも目に付く実技物品。 麻酔器、挿管 用具、ダミー人形、机の上にはシース類もある。
試:お疲れさまでした。前の部屋ではどうでしたか?(この先生非常ににこやか。い い感じ。)
私:まあ、なんとか答えることができました。
試:そうですか。よかったですね。この部屋ではリラックスしてくださいね。ま、上 着も脱ぎましょうか。
ここでは体を動かしてもらいますしね。ははは。じゃあ、まず 、あちらで・・・。(と麻酔器の方に歩き出す。)
試:麻酔器にはソーダライムと麻酔ガ スは入っていませんけど入っているものとしてやってください。 では、この人形に挿管してもらいますので準備をしてください。
私:はい。まずは、麻酔器(アコマ)の裏に回って酸素、笑気、余剰ガスの配管をつ なぎます。 (と、マネをする。実際には酸素と笑気はボンベにつながっていた。) 次 に蛇管を麻酔器につなげてバックをつけて、酸素を出してリークテストをします。 ( と、やってみせる。) セボなどの吸入麻酔薬の残量も確認します。 (と、フリをする 。で、挿管の準備をしようとすると・・・。)
試:フラッシュバルブは確認しましたか?
私:(さっきのリークテストの時やったじゃん 。見えなかったのかなぁ?) あ、すいません。(とフラッシュする。)
試:人工呼吸器の動作チェックはしましたか?
私:(げげっ)あ、はい。(と、チェックに取りかかる。麻酔器を手揉みから人工呼吸器(ARF9 00)に切り替えて人工呼吸器の電源をオン。はじめて見たよぅ、この呼吸器・・・で 、でもタイダルや回数の設定はどこでやるんだぁ?・・・とうろうろする。)
試:設定は人工呼吸器のパネルを押すと飛び出してきますよ。
私:(押してみると本当に でてきた。500の10回に設定していたら・・)
試:設定はどのようにしますか?
私:プロキロ10で10回から14回程度から始めると思います。
試:笑気の安全装置はチェックしましたか?
私:(げげげのげぇ)すみません。(と、やってみせる。)
試:そうですね。では、挿管の準備をしてください。
私:まず、チューブの先端を水につけてカフをいれてエア漏れがないことを確認しま す。で、スタイレットを使うのであれば、滑りをよくするために内腔にキシロカイン スプレーを吹いておきます。で、スタイレットは、挿管チューブの先から飛び出さな いように固定に気をつけます。
試:飛び出しているとどういうことが起こり得ますか?
私:気道の損傷の可能性があります。 喉頭鏡が点灯することを確認してバイトブロック、テープなどを用意して完了です。
試:では、実際に挿管してみてください。
私:はい、まず、バイタルを確認して、マスクフィットをテストします。(と、やっ てみせる。)問題がなければ、睡眠導入剤で眠らせます。呼吸抑制があればアシスト して睫毛反射がなくなったところで筋弛緩薬をいれます。頭部後屈させ、このように 換気します。
試:では、どうぞ。
私:(と、言われて、スッと挿管。カフを入れて胸の音を聞いてセボ 、笑気を入れるマネをする。)
試:はい、結構です。ところで食道挿管をした場合に確かめる一番いい方法はなんですか ?
私:エンドタイダルを見ることです。
試:そうですね。結構です。
試:お疲れのところ悪いのですが今度はラリンゲルマスクを 入れてみてください。
私:はい、まず、目視でラリンゲルマスクに損傷がないことを確かめてカフをいれて 、エア漏れがないことを確かめます。その後にエアを抜いて整形してキシロカインゼ リーを塗ります。(と、やってみせる。)
試:キシロカインゼリーを塗るときに気をつけることはなんですか?
私:はい、ラリンゲルマスクの後面につけ、前面、特にスリットのところにはつけな いことです。
試:では、入れてください。
私:はい。バイタルを確認して入眠後こうやって入れます。(とやってみせる。)エ アを入れて呼吸音を聞きます。
試:筋弛緩は使いますか?
私:施設によって使うところも見たことがあります。
試:ラリンゲルマスクの禁忌はなんですか?
私:フルストマックです。
試:では、研修医にうまく入れる方法をどのようにして教えますか?
私:ラリンゲルマスクを挿入する際に硬口蓋に押しつけるようにして、硬口蓋と咽頭 後壁とで形成される半円に沿わせるようにして入れるように指導します。
試:はい、結構です。
試:では、机の方にどうぞ。(机に座ると上にはシースとガンツの 本体がおいてあった。) ガンツは入れたことがありますか?
私:はい。
試:どのような患者にいれますか?
私:心臓手術の患者であったり、非心臓手術の患者でも心機能に問題のある場合に用 います。
試:どこから入れますか?
私:右内頚静脈を第一選択にしてだめなら左、それもだめならソケイにいきます。鎖 骨下は気胸の可能性もあり、あまり入れたくありません。
試:他にはどこから入れられますか?
私:(えっ?まだ、入れる場所あるの?) えー・・・・・(こ、困った・・・)
試:ここもありますね。肘です。入れたことありますか?
私:CVは肘から入れたことはありますが、ガンツはありません。
試:じゃ、このガンツを右内頚に入れるシュミレーションをしてください。(と、目 の前にセットを差し出す。)
私:まず、寝ている患者さんの頭を若干左に振って、右肩の下に枕を少し入れて頭部 後屈させ皮膚のテンションが出るようにします。で、消毒をしてカテ類の準備をしま す。
試:頭は下げないでいいですか?
私:あ、すみません、下げます。 シースをこうやって水通しをして、ガンツ本体もこうやってバルーンの確認、水通 し をしておきます。で、内頚動脈をこうやって触ってから穿刺します。
試:具体的はどこから穿刺しますか?
私:三角の頂点あたりがいいと思います。
試:では、続けてください。
私:こうやって、穿刺して逆流があったところでガイドワイヤーをいれます。
試:間違って動脈を刺してしまうことがありますよね。静脈か動脈か区別 するにはど うしたらいいですか?
私:色で判別します。
試:色でわかりづらいこともありますよね。その時にはどうしますか?
私:外とうに延長チューブをつけて垂直に持ち上げ、どのくらい上がってくるか、拍 動はどうかを調べます。
試:CVPをはかる要領ですね。結構です。では、続けて下さい。
私:こうやってシースを入れて(とやってみせる)、ガンツ本体のPAに圧ラインをつ なげシースに挿入します。10cm、20cmこの辺でバルーンをインフレートして更に進め ます。
試:どのくらいでインフレートしますか?
私:20cmくらいがいいと思います。
試:では、更に進めたときの波形を書いてみてください。(と、ホワイトボードを指 さす。)
私:まず、こう、RAに入って、RVに入るとこうなって、PAに入るとこうなってウエッ ジするとこうなります。(・・・と、ホワイトボードに波形を書く。)
試:どのくらいでウエッジしますか?
私:体型にもよりますが50cmあたりでウエッジすることが多いです。60cmを過ぎても ウエッジしなければどこかでトグロを巻いていることが考えられます。
試:ウエッジしたときの圧は何を意味していますか?
私:左房前負荷です。
試:カテを進めていて気管チューブから血がでてきました。なにを考えますか?
私:PA損傷が考えられます。
試:どうしますか?
私:人を呼びつつ100%にしつつ、吸引します。バイタルを対処的に安定化させ、反対 側までたれこませないような努力をします。で、できるだけ速くPAを修復してもらい ます。
試:はい、結構です。御苦労様でした。これで思い切り遊べますねぇ。お疲れさまで した。
・・・と、ま、こんな感じで口頭試問を終了しました。とはいうものの、私にはまだ 、病院での麻酔実技をうけなくてはなりません。今回、筆記、口頭試問を同時に受け たひとは必要ないのに・・・ぶつぶつ。 別の指導医の先生に聞いたところ、口頭試問はカエルちゃんを排除する目的もあると か。つまり、机の上での筆記がどんなにできても、実際の場面で(臨床で、試験官の 前で・・・)立ちすくんでヘビににらまれたカエルちゃんのようになってしまうので はだめだ、と。そういうカエルちゃんでは、研修医に指導は無理なんじゃないか、と いうことみたいです。 みなさんの御健闘をお祈りいたします。