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最終更新:2003年7月20日

「まさ」さん

「まさ」さん:第1会場

 この部屋の試験官の一人は,実は当講座教授のN先生であった.自大学の受験者の場合は退室しなければいけない.現在は,このような事態は起きないように配慮されているらしい.

N教授:(私を見てニヤっと笑い)では私は失礼します.(退室)

AR 患者の麻酔と循環管理

試験官A:ではこれをみて下さい.

:(プリントを渡される.AR がある患者の低位前方切除の症例.術前の患者の状態と麻酔チャートが載っていた.)

試験官A:よろしいですか?

:はっ,はい.

試験官A:この患者の問題点はなんですか?

:えー,AR が存在することです.

試験官A:他にはどうでしょう.

:PaO2 が 70 と,年齢の割に低下していると思います.

試験官A:原因は何でしょう?

:AR の心不全による二次的なものだと思います.

試験官A:おそらくそうでしょうね.では,投薬を含め AR の状態はどうでしょう?

:......呼吸困難があり,コントロール不良だと思います.

試験官A:それは投薬前の状態で,現在は呼吸困難等が改善されて,手術に臨もうとしているのです.

:はあ.......

試験官A:心エコーの結果はどうですか?

:(あっ,そんなものがあったのか)えーと,EF が 55% と比較的保たれていて心機能は良好だと思います.

試験官A:そんなところですかねえ.では,麻酔を行うにあたっての注意点は何ですか?

:AR が存在しますので,心抑制の少ない麻酔法を選択します.

試験官A:具体的にどういうことです?

:硬膜外麻酔で行いたいと思います.

試験官A:どうしてですか?

:(うーん,どうしてだ,どうしてだ,どうしてだ......)硬膜外麻酔は心抑制が少ないからです.

試験官A:心抑制,心抑制と言いますが,意味が曖昧ですねえー.AR ということにしぼって考えてください.

:......(無言が最も悪いと知りながら黙ってしまう.)

試験官A:末梢循環とかはどうですか?

:あっ(思わず声が出た).硬膜外麻酔は末梢血管抵抗を低下させて,ARの逆流を減少させるため良いと思います.

試験官A:そうですね,他にはどうですか?

:......(またしても無言状態).

試験官A:いけませんねー.学生の試験なんかでも良く聞かれることですが,頻脈を避けるんですねえ.

:(学生とまで言われてしまったか......)はい,硬膜外麻酔により交感神経がブロックされれば徐脈傾向になるため良いと思います.

試験官A:では,硬膜外麻酔で血圧が低下したらどうしますか?

:一般的に使われているエフェドリンは,交感神経を刺激し末梢血管抵抗の上昇や頻脈を招くので,ドーパミンなどのカテコラミンを中心に投与します.

試験官A:そうですね.末梢に対する作用よりは心機能を向上させるようにするんですね.そこにある麻酔記録は麻酔の失敗例ですが,どの点が問題だと思いますか?

:硬膜外に最初に 2% のメピバカインを 15 ml 注入しているのが大量すぎると思います.

試験官A:はい,正常な患者に対しては多い量ではありませんが,今回の患者の場合は多いでしょうね.

局所麻酔薬中毒の治療

試験官A:麻酔経過の中で,患者が不穏になり意識が混濁していますが,原因は何でしょうね?

:硬膜外投与したメピバカインによる局麻中毒を疑います.

試験官A:今の場合の治療として,ジアゼパムの静注は正しいですか?

:(教科書的には正しそうだが,わざわざ聞いてくるからには裏があるのか?はいと言うべきか,いいえと言うべきか......)......はい.

試験官A:そうですかあ,どうしてですか?

:ベンゾジアゼピンレセプターを介し,中枢神経に抑制的に働くからです.

試験官A:その機序は?

:(げげっ,よくわからん).......

試験官A:ちょめちょめ,ちょめちょめ,ちょめちょめ(良く覚えていません)というわけなんですねえ.さらに最近はベンゾジアゼピンの拮抗剤もありますから,使いやすいですねえ.

:は,はい.

試験官A:まー,これぐらいでいいでしょう.わかっているんでしょうが,もう少しまとめて答えられるようにしてください.

:すいません.どうもありがとうございました.

(出口にて)

N教授:どうだあー,ちゃんと答えたかー?

:いえ.......

第1会場の感想

 試験官は比較的やさしいのだが,私がきちんと答えられなかったという感じ.最初に症例のプリントを読んでいる時は,頭の中が真っ白になり,ほとんど把握不能であった.

「まさ」さん:第2会場

喘息患者の麻酔

試験官A:まずこれを見てください.

:(またまたプリントを渡される.12 才の眼科の臨時手術.喘息とアレルギーの既往がある.)

試験官A:よろしいですか?

:はっ,はい.

試験官A:このような患者では,先生は何を選択されますか?

:喘息の既往がありますので,バルビタール系のものは避けて,ベンゾジアゼピン系のミダゾラムなどを用います.

試験官A:アトロピンはどうですか?

:発熱しているので使いません.

試験官A:それに喀痰の排泄も悪くなりますしね.では,麻酔の導入はどうしますか?

:同じくバルビタールは喘息ということで使いにくいので,ベンゾジアゼピン系やケタミンにより導入し,筋弛緩薬を投与し,吸入麻酔薬で麻酔を深くして挿管します.(ここで,ふと臨時手術だったことに気づき,誤嚥のことを指摘されたらどうしようと思ったが,大丈夫だった.)

試験官A:喘息で禁忌となる筋弛緩薬は何ですか?

:(エー,まさか国試じゃあるまいし,dTc と答えるのか?? SCC は禁忌じゃねえよな.うーん.)dTc です.

試験官A:そうですね.まー,最近はあまり使われませんね.

:(なんでえ!なら聞くなよ!)

試験官A:では,この患者が喘息を起こしたらどう対処しますか?

:筋弛緩を十分に効かせ,吸入麻酔薬により麻酔深度を深くします.薬剤療法としてはアミノフィリン,ステロイドなどを投与します.

試験官A:アミノフィリンの投与法はどうします?

:4 〜5 mg / kg を15 分以上かけて点滴静注します.

試験官A:投与中の注意点は何ですか?

:頻脈と不整脈です.(こりゃあー順調だぜえ!)

試験官A:アミノフィリンの作用機序は何ですか?

:えー......(あれっ,何だっけ???思い出せん......)

試験官A:phosphodiesterase を抑制し,cAMP を増加させて気管支を拡張させるのですね.

:はい,そうです.(いかん,完全に忘れてる)

試験官A:吸入療法も行われると思いますが,選択的なβ2 刺激薬は何がありますか?

:(何だっけ,わからん,沈黙よりはいいか)イソプレテレノールです.

試験官A:うーん,イソプレテレノールにはβ1 の作用もありますね.

:(そうだよな)

試験官A:サルブタモールなんかが良く使われますね.

:はい.(そんな気もするな)

試験官A:では私はこの辺で.

星状神経節ブロック

試験官B:先生はこれまでどんな神経ブロックをしたことがありますか?

:(きたー,実は先にこの部屋で面接していたN先生が同じ質問をされ,情報が入っていた.)脊椎麻酔,硬膜外麻酔の他には星状神経節ブロックです.

試験官B:では,星状神経節ブロックは何をメルクマールに行いますか?

:第6頚椎の横突起です.

試験官B:それを何と言いますか?

:(はあー?何ですかー?)......忘れました(ほんとは全然知らない).

試験官B:忘れましたか.ちょめちょめ(覚えてない)です.では横突起のどこを狙いますか?

:やや内側を狙います.

試験官B:どうしてですか?

:(そこにものがあるからじゃあないの?)

試験官B:そこに神経節があるというのはもちろんですが,他に理由がありますか?

:(確か昔読んだ文献に)手の方に良く効くようにです.

試験官B:それはどのレベルで行うかで決ることでしょう.まあ,いいですか.SGB の合併症は何でしょう?

:動脈内注入と......

試験官B:どこの動脈に主に注入しますか?

:椎骨動脈です.

試験官B:他の合併症は何がありますか?

:くも膜下注入です.

試験官B:くも膜下にはどのような経路で到達しますか?

:ルートのシーツを通じて達します.

試験官B:そうですね,はい,いいでしょう.

:(おお,あっさり,ラッキー)どうもありがとうございました.

第2会場の感想

どちらも,教科書的なことを優しく聞いてくれた.アミノフィリンの作用機序を答えられなかったのはいまだに悔やんでいる.難しいことに答えられないときは誘導してくれるが,簡単なことの場合は,沈黙と羞恥心にたえなければならない.

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