スミルノフ教授公式ウェッブサイト> 実況!麻酔指導医 試験口頭 試問>「すみ」さん
最終更新:2003年7月20日
試験官A:朝早くからご苦労さんだねえ.では座って下さい.
試験官B:それでは私から症例を提示します.50 歳の男性で交通事故後の患者に SGB をしてたんですなあ.患者は右手の温感を訴えてました.患者が外来を出た後,医者は看護婦に呼ばれました.そこで患者は呼吸困難を訴え,チアノーゼを呈していました.何を考えますか?
私:(むむ,いきなり SGB の合併症かあ.反回神経麻痺,腕神経叢ブロック,クモ膜下注入,硬膜外注入,血管内注入,血腫形成............呼吸抑制でえ発症は遅発性だから..........ああ,早く何か答えなくては.ええい!)あのお,局麻薬が誤ってクモ膜下や硬膜外に注入されたことが考えられると思います.
試験官B:ほお,ではクモ膜下に入ったとしましょう.どおして呼吸麻痺がきますか?
私:(ええ?何でこんな当たり前のこと聞くのお?)それはクモ膜下ブロックとなってC領域の麻痺が生じるからです.(まずいなあ、"C領域"は余計なことかも)
試験官B:ほお,C領域のどこですかあ?横隔膜神経ですか?
私:は,はい.(やはり突っ込まれてしまった)
試験官B:でも片側の横隔神経麻痺ですよお.
私:(クモ膜下注入の話だろ?なんで片側なんだ?)そ,そうですねえ.
試験官B:局所麻酔薬の種類によってはどうですか?たとえばキシロカインとマーカインではどう違いますか.
私:マーカインの方が効果発現が遅く,運動麻痺の効果も弱いと思います.
試験官B:循環に対する効果はどうですか?
私:マーカインの方が心毒性が強いと思います.
試験官B:ほう,心臓のどこに効くんですか?
私:え?・・・・直接作用だと思うのですが(きっとマーカインを使った硬膜外・脊椎麻酔による循環について聞きたかったのだろう)
試験官B:直接作用ねえ.
私:うーん,詳しいことはわかりません.
試験官B:そうですか.では私はこれで.
試験官A:私の方はですねえ,60 歳女性の子宮全摘の麻酔をですねえ,硬膜外麻酔と GO - イソフルレン 0.3% でやってたんですがあ,突然頻脈をきたして不整脈もでてきたんですなあ.原因として何を考えますかという問題なんですが.
私:硬膜外と浅い全身麻酔ですねえ.それならまず硬膜外の効果が切れてきて交感神経の緊張をきたしたことが考えられます.
試験官A:そうですね.他には?
私:出血などによる hypovolemia によって,反射性の頻脈をきたしたことが考えられます.
試験官A:そうですね.それから?
私:えーとですねえ........
試験官A:呼吸状態の変化によってはどうですか?
私:あっ,そうです.何らかの換気不全によって高炭酸ガス血症になっていることが考えられます.
試験官A:そうですねえ.hypoxia でも普通は徐脈ですが,初期には頻脈になりますねえ.あとは特種な例だけど褐色細胞腫とか,まあいろんなことを考えていかなくてはならんということですよ.
私:は,はい.
試験官A:では不整脈についてはどうです?抗不整脈薬の分類を知ってますか?
私:はい.class 1 からclass 4 までの 4 種類に分類されています.
試験官A:そうそう,それ何ていう分類ですか?
私:ええ〜?(以後、私はポリクリの時に学生に同じ質問をすることにしている.Vaugham-Williamsを答えられる学生は年に数人である)
試験官A:ははは,まあ,Vaugham-Williams の分類というんですがね,先生はまず何を使いますか?
私:不整脈の種類にもよると思いますが,心室性期外収縮ではまず class 1 のキシロカインを使います.
試験官A:量はどれくらいですか?
私:体重当たり 1 mg をまず静注して効果をみます.
試験官A:そうですね.それでもだめなら何を使いますか?
私:class 1 ではプロカインアミドとかジソピラミドとかありますが,最近ではclass 2 のカルシウム拮抗薬をよく使います.
試験官A:そうですね,最近はよく使いますね.はい,どうもごくろうさまでした.
私:ありがとうございました.
試験官Bはどのような答えを期待しているのかが分かりにくかった.誘導は親切な意図だと思ったのは間違い.ひっかけようとする意地悪さがうかがえた.試験官Aは非常にやさしく基本的な質問ばかりだったが,それだけにかえってうまく答えなくてはと緊張するはめになった.沈黙の時間が長いと気まずくなってくるので,考えてまとめている時間はない.簡単なことでも即答できるようにまとめておくことが必要と考える.
試験官A:となりでは何を聞かれましたか?
私:SGB の合併症と婦人科手術中の頻脈不整脈についてです.
試験官A:普段はどういう仕事をしてますか?
私:一般の臨床麻酔に従事しております.
試験官A:どういった科の麻酔をかけていますか?
私:ほとんどすべての科です.
試験官A:ほお,全部できる.得意な麻酔は何ですか?俺はこれだという麻酔は?
私:いやあ,そうおっしゃられても........
試験官A:うーん,ではもう一発産婦人科でいきますか.帝王切開術の麻酔は何でやりますか?
私:(当時は脊椎麻酔派だったけど,硬膜外麻酔派の先生も多かった.そこで試験官の顔をうかがいながら)時間的余裕がある場合には硬膜外を選択します.
試験官A:どこから刺しますか?
私:L 2/3 から刺すことが多いです.
試験官A:それはどうしてですか?
私:局所麻酔薬の量によっては充分上位にも効きますし,硬膜外では効きにくいとされているS領域への効果も期待できるからです.
試験官A:薬の量と種類は?
私:2% キシロカインを 12 から大きい人では14 〜 15 cc 入れることもあります.
試験官A:それで本当にSが効きますか?
私:時間をかければ効いてきます.
試験官A:そうですかあ?どれくらい待ちますか?
私:20 分ぐらいです.
試験官A:本当ですか?術中に下の方を痛がったりすることはありませんか?(しまった,硬膜外は嫌いなのか?)
私:それはあります.
試験官A:ほらそーでしょう.そのために何か対策はありますか?
私:(残念,やはり脊椎麻酔派の先生だったらしい)はい,仙骨硬膜外麻酔を併用することもありますが,局麻薬の血中濃度上昇を懸念して,最近低位脊椎麻酔との併用も試しています.(これも余計な発言だった.今でこそ脊椎麻酔と硬膜外麻酔の併用はごく普通で,私も現在愛用しているが,当時は異端児的な麻酔だった)
試験官A:(けげんな顔)はーん?まあ,いいや.
試験官A:さて,では脊椎麻酔としましょう.仰臥位にしたとたんに頻脈になりました.まずどうしますか?
私:血圧を測ります.
試験官A:うん,それで下がっていたとしたらどうしますか?
私:輸液の負荷とともに子宮を左方に押します.
試験官A:どうしてですか?
私:子宮の重力によって下大静脈が圧迫され,静脈灌流が減少して心拍出量が減少していることが第一に考えられるからです.
試験官A:そういううの何ていいますか?
私:仰臥位低血圧症候群です.
試験官A:では硬膜外麻酔としましょう.薬を入れてすぐに頻脈になったらどうしますか?
私:血圧を測ります.
試験官A:血圧を測りますね.それで上がっていたら何を考えます?
私:キシロカインが血中に注入されたことを疑います.キシロカインのエピネフリンによる頻脈です.
試験官A:それでは10分ぐらいして頻脈になってきて,血圧も下がっているとしたら?
私:硬膜外麻酔の効果が現われてきたのだと思います.
試験官A:硬膜外麻酔のどういう効果ですか?
私:血管拡張による相対的な hypovolemia です.
試験官A:それだけですか?
私:(仰臥位低血圧の話はもう終わったと思い込んでいた)ええっと........
試験官A:仰臥位になっただけで低血圧になる人ばっかりじゃあないでしょ.やっぱり,硬膜外でも同じようなことが起こるんですね.
私:はい.そうです.(そうか,最初の質問は脊椎麻酔での仰臥位低血圧で,今度は硬膜外麻酔での仰臥位低血圧か,と今ごろ気づく)
試験官A:それでは子供も取り出して,子宮を縫っている時に頻脈で血圧も下がってきた.どうしますか?
私:輸液を負荷します.
試験官A:それでもだめなら?
私:昇圧薬としては,まずエフェドリンを静注して様子をみます.
試験官A:それでもだめなら?原因は何を考えますか?
私:出血でしょうか?膠質液やドパミンなど他の昇圧薬の使用を考えますが.
試験官A:うーん,モニターは何を使用してますか?心電図と血圧の他に.
私:パルスオキシメーターを使ってます.
試験官A:全例で使ってますか?使えないこともあるでしょう.(時代を感じますな.今ではパルスオキシメーター無しの麻酔なんて考えられないでしょう)
私:現在はほとんどの症例で使用してます.(面倒だからウソでも言い張るしかない)
試験官A:そうですか.ではそのパルスオキシメータで酸素飽和度も下がっていたとしたら何を考えますか?低酸素血症で血圧も下がっている.
私:肺塞栓ですか?
試験官A:そうですね.塞栓の原因は何でしょう.
私:羊水や血栓です.
試験官A:羊水?もう子供は生まれているんですよ.他には?(後で調べたが,帝王切開での羊水塞栓も報告されている.)
私:ええっと.....
試験官A:帝王切開では空気塞栓が起きることが報告されてますね.
私:(当然ありうると思うけど,特異的とは言えないよなぁ)あ,そうですね.
試験官A:(試験官Bに向かって)先生,何か聞くことありますか.
試験官B:あなたねえ,SvO2 測ってますか?
私:経験はあります.
試験官B:PEEP を解除したら,SvO2 が 67% だったのが 75% ぐらいまで上がったちゅうんですな.どうしてですか?
私:静脈灌流が増えて,心拍出量が増加したことによると思います.
試験官B:ふむ.SvO2 が変化する因子は何ですか?
私:心拍出量と酸素消費の状態によると思います.酸素の需要と供給の変化です.
試験官B:運ばれる酸素の量はどういったものですか?何でわかりますか?
私:溶存している酸素量の酸素分圧とヘモグロビンに結合している量です.酸素飽和度です.
試験官B:それだけですか?
私:ええっと........(もうすぐ終わるんだとしか考えられない.視野のまわりが白くモヤがかっている.)
試験官B:貧血というのが重要でしょう.ヘモグロビン量によって酸素運搬は大きく変わるでしょう.そういうことです.
私:あ,そうですね.
試験官B:ではこれで終わります.
試験官Aが長く,試験官Bのころにはもう気力負け.試験官が何を質問しているのかしっかりきこうとするだけでせいいっぱい.あまりに基本的なことばかりで,答えられなくては大変だという思いばかりがつのる.目を凝らして試験官の口を見つめるが,白くぼやけて見えにくくなるという現象が生じた.