スミルノフ教授公式ウェッブサイト

・愛と平和の精神に満ちた青少年のための優良ブログです。現在夏バージョンですがたぶん冬もそのままです。
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硝子戸の中から外を見渡すと、霜除をした芭蕉だの、赤い実の結った梅もどきの枝だの、無遠慮に直立した電信柱だのがすぐ眼に着くが、その他にこれと云って数え立てるほどのものはほとんど視線に入って来ない。書斎にいる私の眼界は極めて単調でそうしてまた極めて狭いのである。

その上私は一昨年の暮から気の病でほとんど表へ出ずに、毎日この硝子戸の中にばかり坐っているので、世間の様子はちっとも分らない。心持が悪いから読書もあまりしない。私はただ坐ったり寝たりしてその日その日を送っているだけである。しかし私の頭は時々動く。気分も多少は変る。いくら狭い世界の中でも狭いなりに事件が起って来る。それから小さい私と広い世の中とを隔離しているこの硝子戸の中へ、時々人がメールやコメントを寄こす。それがまた私にとっては思いがけない人で、私の思いがけない事を云ったり為たりする。私は興味に充ちた眼をもってそれらの人に返事を書いたりブログに引用した事さえある。

私はそんなものを少し書きつづけて見ようかと思う。私はそうした種類の文字が、 忙がしい人の眼に、どれほどつまらなく映るだろうかと懸念している。私は電車の中で端末を出して、大きな活字だけに眼を注いでいる読者の前に、私の書くような閑散な文字を列べて画面をうずめて見せるのを恥ずかしいものの一つに考える。これらの人々は火事や、泥棒や、人殺しや、誹謗中傷や、ライフハックや、萌えや、エロや、すべてその日その日の出来事のうちで、自分が重大と思うエントリーか、もしくは自分の神経を相当に刺戟し得る辛辣なツイートのほかには、端末を手に取る必要を認めていないくらい、時間に余裕をもたないのだから。彼らは停留所で電車を待ち合わせる間に、返信メールを打ち、電車に乗っている間に、今起きている社会の変化をツイッターで知って、そうして役所か会社へ行き着くと同時に、自分のパソコンに電源を入れるほど忙がしいのだから。私は今これほど切りつめられた時間しか自由にできない人達の軽蔑を冒して書くのである。

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