ロックンロール誕生を知るための10選の続編です。前回先生はカントリーブルース+スイングジャズからジャンプブルースが生まれ、リズム&ブルース、そしてやがてそれがロック&ロールと呼ばれて白人に広まったこと、さらにヒルビリーやカントリー&ウェスタンもリズム&ブルースの影響を受けてロック&ロールの波へと合流し、それらはロカビリーとも呼ばれるようになったことを10曲でまとめました。黒人系ロックンロールとリズム&ブルース、白人系ロックンロールとロカビリーの境界を語るのは難しいことです。
さて今日はサイト開設8周年記念日であると同時にロックの日でもあります。そこでいよいよ先生がロックンロールをどのような音楽と考えているかを表明します。先生の「ロックンロール」という言葉に対する独断と偏見に満ちたその定義をここに示します。
- 50年代後半にちょっと流行って廃れた古臭い音楽
- 12小節のブルース進行が基本のワンパターンな音楽
- ブルーノートスケールを使用したどれもこれも似かよったメロディ
- 基本的に3コードの単調な音楽
以上です。特に12小節と3コードは重要な条件ですからよく覚えてください。ロックンロールといったら、このような構造をしていなければならんのです。
| I | I (IV) | I | I |
| IV | IV | I | I |
| V | IV (V) | I | I (V) |
たぶん先生以上の世代にとって、ロックンロールとはそういう音楽を指すと思います。いつかコメントでかくたさんが「ロックンロール10選なんてチャック・ベリーが半分とかになりませんか?」とおっしゃっていましたが、まさに先生のイメージもそんなもんです。これで実は先生が「ロックンロール」という言葉にネガティブなイメージしか持ってないことがばれてしまいましたね。ええ、そうなんです。大嫌いなんですよ、あんな脳天気で単細胞な音楽。
ではそういうことで、そんな12小節パターンの曲を肌で感じてもらいましょう!
■ Chuck Berry - Johnny B. Goode (1958)
典型的すぎて、かくたさん同様先生の中のロックンロールの50%はチャック・ベリーでできてます。はっきりいって歌詞がなかったらRoll Over BeethovenもRock and Roll Musicも区別がつかないかもしれません。さすがにジャズくささは抜けてしまってまさにロックンロールですね。
■ Little Richard - Long Tall Sally (1956)
ポール・マッカートニーが初めて人前で歌った歌だそうだからセレクトしました。バックミュージシャンはまだジャンプブルースっぽいですね。
■ Dizzy Miss Lizzy - Larry Williams (1958)
ラリー・ウイリアムズはR&RというよりもR&Bという印象がありますが、ジョン・レノンがこよなく愛したこの曲はロックンロールの条件を充分満たしています。
あと黒人だとファッツ・ドミノですが前回出てるので省略して、白人に移ります。前回登場したエルビスとビル・ヘイリーも省略です。あと、白人ロックンロールスターとして名高いジョニー・キャッシュは、先生にはどうしてもカントリーに聞こえるので外します。
追記:当初ジョニー・キャッシュを抜いたので9曲となってましたが、せっかくなのでエルビスを追加しておきます。教科書的な曲です。
■ Elvis Presley, Hound Dog (1956)
Hound Dogのオリジナルはこちらのビッグ・ママ・ソーントンが歌ったバージョンです。
■ Carl Perkins- Blue Suede Shoes (1956)
まだ少しだけカントリーくささの残るカール・パーキンスですが、ロックンロール史上に残る名曲Blue Suede Shoesは今でも多くのロックミュージシャンに愛され演奏され続けています。ビートルズもカール・パーキンスは大好きで、マッチボックスなど3曲ぐらいカヴァーしてますよね。
■ Jerry Lee Lewis - Whole Lotta Shakin' Going On (1957)
白人といえばジェリー・リー・ルイスは外せませんよね。カントリーくささは破壊されていて、まさにピアノ・ロックンロールの王道です。
■ Gene Vincent - Be-Bop-A-Lula (1956)
20代前半でロカビリーの大スターとなったジーン・ビンセントは、後のネオ・ロカビリーにも大きな影響を与えているのではないでしょうか。
さて、7曲あげましたけど、いずれも3コードが基本で12小節のブルース進行が単位の単純な構造をしており、メロディにはブルーノートスケールが使われております。ですから、バッハの曲が全部同じ曲に聞こえたり、ヘヴィメタが全部同じに聞こえたり、演歌が全部同じに聞こえたりする人がいるのと同様、かつての先生にはどれもこれも同じに聞こえました。先生の中ではこういうのをロックンロールというのであって、この条件から外れるものはちょっと微妙、ということになります。例えば…。
■ Bo Diddley - Bo Diddley (1955)
最近訃報が伝えられて、ニュースではロックンロールの創始者と報道されていたのでボ・ディドリーを上げますけど、ちょっと毛色が違うような気もします。前回先生はロックンロール誕生の軌跡にシカゴブルースのようなシティブルースを省きましたけど、先生はボ・ディドリーはそっち系の人だとの認識でした。この曲はいわゆるダンスカスカダンスカダンダン、ジャングル・ビートあるいはボ・ディドリー・ビートといわれるリズムが強烈な個性を放っており、耳から離れませんよね。しかもコード進行は3コードどころか、もっと単純なワンコードじゃないですか。すでにファンクに近いんじゃない? 先生にはロックンロールより新鮮に聞こえますね。
■ Eddie Cochran - Summertime Blues (1958)
エディ・コクランもロカビリーという印象が強いですが、オリジナル曲にはこの超有名曲があります。しかし、単純な12小節進行にとどまらず、半小節挿入でコードチェンジするというアクセントが古くささを感じさせないポイントなのかもしれません。
さて、50年代後半の最盛期のロックンロール・ミュージック特集、その最後を締めくくるのはこの人に決めていました。
■ Buddy Holly Live in New York With Peggy Sue (1959)
ということでバディ・ホリーなんですが、彼も今まで聞いてきた典型的なロックンロールとは違うような気がします。このペギー・スーは一応12小節単位のブルース進行なんですが、ブルーノートスケールの使用頻度が少なく、より白人が聞きやすいポップな仕上がりになっている気がします。先生今気がついたんですが、ブルーノート抜いてメジャースケールになり、さらにヨナ抜き音階にして日本人にも受けるようにしたロックンロールがジッタリンジンのにちようびなのかなとか。
話がそれましたが、バディ・ホリーに関してはThat'll Be The DayにしてもMaybe Babyにしても、「ロックンロール」という範疇では語れず、それを遥かに超えたポップミュージックに昇華する可能性を秘めていた人のように思えます。残念ながら彼は59年に不慮の死を遂げますが、彼らが確立したギター2+ベース+ドラムという編成は、リバプールの4人の若者に引き継がれます。そして4人の若者はバディ・ホリーのバンド名クリケッツ(コオロギ)にあやかってビートルズ(カブトムシ)と名乗るようになり、ロックンロールを超越する使命さえをも引き継いでいくことになるのです。


Comments
先生は何故、
「ネガティブなイメージしかない、能天気で単細胞な音楽であるロックンロール」
に、労力を注ごうとお考えになったのでしょうか?
これが啓蒙主義という物なのでしょうか?
先生のファンです
実は10曲すべて内田裕也とかだったらどうしようと心配していました。
あ、あれは「ロケンロール」という別のジャンルか。
ちなみに私のユーヤさんベストテイクは
映画「クレージーだよ奇想天外」の挿入歌
「俺のハートは3333万3330℃」です。
さすがにYouTubeにもありません。
DVDでご確認ください。
ということでまとめリンクに追加しておきました。さらなる続編を期待しております。
ひょっとして格闘技にお詳しい方でしょうか。啓蒙主義とは先生が感情的に嫌いな物なのに理性の力を発揮しているという意味でしょうか。答えはまだ先生には分かりませんが、後々のエントリーで答えのようなものが出せるかもしれません。
>しかたんさん
あなたが女性であることを期待します。
>かくたさん
内田裕也が日本におけるロック界でどういう存在なのかよく知らない若者も多いと思います。内田裕也考、内田裕也論のようなものはネットでもあまり多く見かけないので狙いどころかもしれません。ひとつどうですか?たいへんそうなのでかくたさんに振ります。
>Andyさん
初稿は9選でしたが、やっぱり10選に書き直しました。こんなエントリーでも、結構資料集めとか記憶の確認とかにエネルギーが必要な作業です。疲れます。そんなに多くの方に需要があるとは思えませんし。でも、「さらなる続編を期待しております」が社交辞令だったとしても、Andyさんの言葉は私には絶対なので、続編はやらざるを得ません。何とか頑張ります。
バディ・ホリーの「ペギー・スー」にはラテンの匂いを感じます。
セレクト外ですがリッチー・ヴァレンスの影響でしょうか。
私もこないだまで勘違いしてましたが、ヨナ抜き音階=沖縄音階ではないようで。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9F%B3%E9%9A%8E#.E6.97.A5.E6.9C.AC.E3.81.AE.E9.9F.B3.E9.9A.8E
沖縄音階で余談ですが、ビギンの人気曲「島人ぬ宝」のAメロで松山千春の「大空と大地の中で」が歌えますのでお試しください。Webで検索しますとみんな気付いてるようです。沖縄出身者に聞きますと現地ではかつてなぜか松山千春が大人気だったそうです。何故。
結論として
「ロックンロールとはいい加減な音楽」
というのがいいかと。
多義性を込めて「加減」は漢字にしておきました。
リッチー・ヴァレンスも最終候補に残りましたが、ヴァレンスといえばラ・バンバ以外を選ぶわけに行かず、ところがラ・バンバは先生の中では明らかにロックンロールではないので、外すしかありませんでした。
ヨナ抜き音階≠沖縄音階、うっかりしていました。手元に楽器が全くない状況が10年近く続いており、さすがに脳内鍵盤も薄れてきて使い物にならなくなってきています。また、千春が沖縄音階というのも気付いていませんでした。そうと気づきにくいように使うというのは、芸術の醍醐味ではないでしょうか。心に留めておいていつか検証しようと思います。
「ロックンロールとはいい加減な音楽」、かくたさんとは世代的に近いんでしょうか。音楽観にかなり共通するものを感じます。次回からは、先生がいかにして「ロックンロール」という言葉を嫌いになっていったかについて書いていこうと思います。