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読者の皆さんもすでにご存じのことと思いますが、先生は野鳥マニアです。冬の日本には、ハクチョウやガン、カモといったガンカモ類が越冬するために渡ってきます。そうしてゆっくりと羽を休め、栄養を蓄えて、今まさにシベリアに帰ろうとしています。要するに、冬鳥シーズンももう終わりってことですよ。つーことは、このエントリーも早く上げとかないといかんちゅう話ですよ。

皆さんはラムサール条約をご存じかな。ガンやカモのような水鳥の生息に重要な湿地を保全するための国際的な条約です。石川県では加賀市の鴨池が唯一の登録湿地であり、加賀市鴨池観察館が中心となって鴨池周辺の環境整備に努力しています。そうして秋から冬にかけて、マガンやコハクチョウ、それにカモたち、トモエガモなんちゅう貴重な鳥もやってくるわけです。もう今時分は一部のカモ類が残ってるだけだと思いますけど、お近くにお住まいの方はぜひ来シーズンにでも行ってみてください。

ところで、そんな野鳥保護のメッカみたいなところにやってくるカモを、なんと先生鍋にして食っちまったよ、というのが今回のレポートです。

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まずは鴨池に向かいます。金沢市内からでも車で1時間かかりません。

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もちろんラムサール条約登録地ですから、勝手に池に近づくことはなりません。必ず鴨池観察館から観察しましょう。

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観察館からは大きなガラス窓ごしにゆったりと池を観察することができます。スコープも常備してありますし、イケメンのレンジャーが親切に解説してくれますので初心者でも安心です。

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観察館から見た鴨池です。マガンやカモたちが水面でまどろんだり、猛禽類に驚かされて慌てて空を飛ぶ様子を見ることができます。

さて、環境保護の意識が高まり、そして養殖技術が発展した今とは事情が異なり、昔は鴨池にやってくるカモは貴重な食料でした。この地方には江戸時代から続く「坂網猟」という伝統猟法があります。たしかに現代では野鳥の保護は大事なことですが、文化的な側面から「坂網猟」も大事な伝統文化です。したがって、「坂網猟」は石川県無形文化財に指定され、狩猟期間と捕獲数が制限された上で現在も続けられているのです。詳しくは以下のページをご参照ください。

■坂網猟

■塗師屋さんのヒマつぶし:伝統猟法「坂網猟」
坂網猟の猟師をされている方のブログです。

そして、加賀市の料亭や郷土料理店では、この坂網猟で捕らえられたカモをいただくことができるのです。夕暮れとともに私たちは鴨池を後にし、加賀市内のとある料理店に向かいました。

「坂網猟」は夕方に行われます。カモは夜行性なので、日の入りとともに餌を求めて池を飛び立ちます。その飛び出したカモに網を投げて捕えるのが坂網猟です。つまり、食事前のカモは腹の中が空っぽなので、余計な臭みがありません。それに、鉄砲による狩猟と違って生け捕りです。先生も動物実験なんかに関わる仕事をしているので分かるんですが、生け捕りだと、心臓が動いているので血抜きが楽に行えます(これ以上詳しく言うと残酷な話になってしまうので、察してくださいね)。鉄砲による狩猟だと体内に固まった血液が残ってしまいますから、肉を水につけて血抜きをせんといかんのです。

さて、夕刻の開店と同時に予約していた店に入りました。これが新鮮な野生のカモの肉です。見るからに新鮮なお肉です。
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手前に見える肉団子は、軟骨を団子状にしたものだそうです。食べられるところは無駄にせずすべていただく、それが野生のカモへの感謝のしるしというものです。

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カモの肉は、まず小麦粉にまぶしてから鍋に入れます。これがこの地方に伝わる伝統的な料理法、「じぶ煮」です。

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うまい、うまいよ、ああ、ありがたい。遥かシベリアからわざわざ飛んできたのが私に食べられるためだったなんて、本当に申し訳ない。どれほど長くて厳しい旅だったのだろう、そのようなことに思いを寄せながら食べていると、会話も少なくなります。ただただ食べ続けるのみです。

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ふと皿を見ると、ネギにずいぶんと新鮮な血がついているのが見えました。時は開店直後、まだ夕方の早い時間だったので、私はこれは昨日捕ったカモなのだろうと思っていたのですが、仲居さんにお聞きすると意外な答えが返ってきました。
「ついさっき捕れて、うちに来たばっかりのですよ。捕れたてのホヤホヤです。」
私はてっきり、どこかで処理されて肉だけが店にやってくるのだとばかり思ってたのですが、これも思い違いだったようです。
「今さっき、そこでさばいたんですよ。いやー、もうすごくて、私はとても見てられないんですよー」
そうか、ついさっき、そこで首をはねられたんだろうな。そういう事実を、ある程度覚悟はしていたのですが、私たちの箸はそこで一瞬動きが止まりました。ちなみに、どんなカモだったのが聞いてみたところ、その仲居さんはあまりカモに詳しくないらしく、何というカモか分からないとのことだったのですが、緑の頭をしていたということから、まず間違いなくマガモちゃんのオスだと思われました。

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マガモちゃんのオスです。

ほら、魚だと生き造りとかいって、尾をばたつかせ、口をパクパクさせたままの魚が出てくるじゃないですか。でももし、この肉にマガモちゃんの尾羽と頭がついていて、尾羽をばたつかせ、口をパクパク、その上ガーガーとか鳴いてたりしたら、そりゃあもう食べられるどころの騒ぎじゃないよな、そんなマガモちゃんの姿をついつい想像したりして、でもどうして私はそのような境界線を鳥と魚の間に引くことができるのだろうか、そんな資格が私にあるのだろうかなどと、いつもの癖でしばらく思索の旅に出てしまったのが箸が止まった原因です。

でも、先生は再び気を取り戻して食べ始めました。軟骨の肉団子を口に入れると、何ともいえない野生の香りが広がりました。先生は、石川県に来てからもっと野鳥が好きになり、もっと野鳥の観察や撮影に精を出すようになっていました。ですからなおさらだったのでしょうが、鳥の肉をいただくことに、これほど感謝の念が高まったことは今までありませんでした。

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全量摂取です。何ひとつ残さずいただきました。ありがとう、マガモちゃん。先生はこれから君の仲間を見るたびに、君のことを思い出すよ。

皆さんも狩猟期間中に加賀に来られることがあったら、「坂網猟」で捕れたカモをご賞味してみませんか。もちろん捕獲数が限られてますので、要予約ですし、必ず食べられるとは限りません。

追記:このエントリーは、実は昨年書く予定だったのですが、思い悩んでいるうちにシーズンを過ぎてしまってお蔵入りになっていたものです。そうこうするうちに今年のシーズンも終りを迎えてしまったので、ようやく重い腰を上げ、本日「感謝の日(3月9日、サンキューの日)」に書かせていただいたしだいです。お粗末さまでした。

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Comments

gizmy | 2008/03/10 00:54
あれ?今年も行かれたのかな?と思ったら、昨年でしたか・・・(←こんなん書いたらストーカーみたいだなぁ)

いいなぁ・・・鴨なべ・・・。
ゴンベッサ | 2008/03/10 05:53
養殖じゃない鴨か・・・一度は食べてみたい食材ですけど・・・
それよりの猟の方を生で見たいかな・・・
テレビではたまに流れるけど、実際はなかなか見れるもんじゃないし
ゴル53 | 2008/03/10 07:45
「食べる」という事は「他者の命をいただく」ことなのだ、と
あらためて教えてもらったようなエントリーでした。
こういうのはぜひ子供のうちから、野鳥観察とセットで
経験できたらいいよなぁ・・・と書いてから思ったけど、
加賀の料亭での、伝統的狩猟で捕った鴨料理なんて!
そんなのガキんちょには勿体ないっすね☆ 羨ましいっす・・。
アヤゾウ | 2008/03/11 22:14
最近友達がベジタリアンになりつつあるんですけど、
その理由が「最近屠殺の動画を見て、人間のために殺される動物がかわいそうになったから」だそうで。
別に個人の自由だとは思いつつも、なんかやっぱ釈然としない話なのです。
yu-no | 2008/03/15 12:48
実はこの「マガモちゃんが」の部分を「人間ちゃんが」と時々置き換えてしまう自分がいます。食物連鎖の頂点に立ってて良かった、などと思ったり^^;
野菜も生き物と思うので、すべて食物はありがたくすべていただきます。先日ネギの青い部分を捨てるという輩がいたので説教いたしました。
スミルノフ | 2008/03/26 20:17
>gizmyさん
ストーカー大歓迎です。今年中に一度オフ会しましょう。
>ゴンベッサさん
野鳥を猟して料理する方のすばらしいサイトがあります。ちょっとグロいですが。
>ゴル53さん
「食べる」という事は「他者の命をいただく」こと……頭では分かってるんですが、心から感謝できているかというと先生も自信ないです。先生のエントリーなんてただのおちゃらけに過ぎません。
>アヤゾウさん
先生が今までで一番残虐だと思ったのは生きたまま皮を剥がれるタヌキの映像でした。あれ以来毛皮はちょっとダメになりましたね。
>yu-noさん
食物連鎖の頂点に立つ者は最も数が少なく、最も絶滅の危機にさらされやすいはずなんですが、複雑な心境になりますね。
vivida | 2008/03/27 12:39
私も野鳥が好きで、こちらのPhotoLogの方も楽しみにしております。
ところで、坂網猟では捕まえるカモの種類を選べないように思うのですが、もしも貴重種のトモエガモ(そちらにはたくさんいるのでしょうが)が捕まったら、やはり食べちゃうのでしょうか?あるいは種によってはリリースしてしまうとか(たまに珍ガモが捕まっていそうですね)。
真面目な質問ですみません。もしご存じでしたら・・・。
スミルノフ | 2008/03/28 19:48
最近は鳥の写真を撮る機会もめっきり減ってしまって、しかも下手くそな写真ばかりですので、恐縮です。ありがとうございます。さて、私も正確なところは把握していないのですが、狩猟種は法律で定められていること、坂網猟で捕らえられたカモはすべて料理になるわけではなく、研究用になっったり、発信機をつけて放たれたりもしているようですから、料理になるのは大方マガモなんではないかと予想します。今度鴨池にいったらレンジャーさんに確かめてみますね。
鴨とりゴンベ | 2008/03/30 22:34
はじめまして!鴨池で坂網猟をしている「鴨とりゴンベ」です!
お粗末ながら「坂網猟」について少しでも皆さんのご理解が得られればと思いブログにアップしています!
vivida さんの
<坂網猟では捕まえるカモの種類を選べないように思うのですが
との問い・・・鋭い・・・
トモエちゃんなんかも飛んできます!
ハシビロガモやキンクロなど多くの種類が飛んできます。
わずか10分くらいの僅かな時間の猟の中で、飛んでくる鴨のタイミング(順番)が決まっています。
それでも混ざってくる事もありますが、できれば「マガモ」を狙って網を上げます。
網の目の大きさも変えてありますので「トモエガモ」などは入っても突き抜けて飛んで行きます。
コガモを捕まえるのに目小(メジョウ)と呼ばれる網も使うことがありますが、生け捕りですから種が違えば「逃がす」こともできるのがこの猟の特徴です。
鴨が見えて「コンマ数秒」で判断して網を上げる。(15メートル前後まで)最初は信じられませんでしたが、今では少しずつなれてくるものです。
こんな芸当ですが、年に一度だけ「坂網保存会」が主催する「坂網猟観察会(有料)」なるものが鴨池観察館で説明を受けてから参加することができます。
毎年、この日は鴨が捕れるんです・・・何故か・・・不思議に・・・それもワキ(沢山捕れた日)の日に!
たしか1月の成人式の日に決めてあるんじゃなかったかな?
時期的に会わなかったら私のブログにコメント頂ければ日程を調整して観察することも可能です。
(友人と言う事で)私の独断でお連れもできますが、「猟について理解のある方」に限らせていただいております。
こちらのブログにコメントしていただいてる方々は好意的にされてる方ばかりのようですので歓迎します!
是非ともおいでください(^^♪
猟期は終了していますので、今年の11月15日以降でお願いします。   by sakaami
スミルノフ | 2008/04/01 23:19
鴨とりゴンベさん!
直々にお答えいただき感謝感激です!
やはり狙いはマガモなのですね。網の目を変えることについては全く思い浮かびませんでした。貴重なコメントをいただき、重ねて御礼申し上げます。
vivida | 2008/04/07 19:14
鴨とりゴンベさま、教授さま、遅ればせながら、ご丁寧なお返事ありがとうございます。わずかな時間の間に種毎に飛ぶ順序があるなんて、当事者ならではのお話し頂き恐縮です。私の住んでいる東北から加賀ははるか彼方の地ですが、いつか猟を間近で見て、マガモも食べに行きたいと思います(あ、鴨池でバードウオッチングも)。

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