これから先生が考察する問題は以下の2点である。
1)他人のうんこ臭は不快なのに、自分がうんこしているときはどうして自分のうんこ臭がそんなに嫌でないのか。
2)うんこしているときには気にならなかった自分のうんこ臭ではあるが、一度トイレを出てからまた戻ると、まるで自分のうんこ臭が他人のそれのように不快に感じるのはなぜか。
この問題に関しては、4月1日に「ウンコはどれぐらい、人に精神的ダメージをあたえるのですか?」というエントリーをあげた。これは全くのウソ記事ではあるが、別にエイプリルフールだから書こうと思ったわけではなく、たまたま昔書いたものを公開したに過ぎない。うんこ臭の話をよくあるリセプターとアゴニストの話に置き換えたらどうかなと、軽い気持ちで臨んだものである。結果的には、例えば「村上春樹風に語るスレジェネレーター」に「うんこ」と入力して出来上がったものとそう大差ない作品なんである(村上春樹風にうんこについて語るスレ)。
しかし、このウソには限界があった。それならば出したてのホヤホヤのうんこなら、たとえ他人のうんこでも平気ということになるではないか。先生は、この反論に、さらにウソを積み重ねて答えようと試みた(自分のうんこの臭いの話の続き(うその上塗り))。本当は、あらゆるサブタイプのベンドルフィンやベントキシンに親和性のあるμベンピオイド受容体を持っている人がいて、そういう人がスカトロに走るのだとか、さらに延々と自説を展開する予定ではあったのだが、なんだかめんどくさくなってきたので、この辺でまじめに考察してみることにする。
とはいっても、先生は別に嗅覚に関する科学論文を読んでいるわけではないし、どうやらウェブ上にもまともな情報源はあまりない。そこでここは、日本で唯一といってもよい嗅覚生理学の権威、外崎啓一教授の著書を手がかりにする。非常に面白い本なので、うんこファンならずとも生理学に興味のある方にはオススメの良本である。
最初にあげた問題を解決するヒントとして、先生がこの本から抽出したポイントは以下の3点である。
1)うんこ臭の本体はスカトールという物質である。実は鎮静・抗うつ作用が確かめられているジャスミンの良い香りの本体もスカトールである。ジャスミンが良い香りに感じられるのは、単にスカトールの濃度が低いからである。
2)嗅覚は同じ臭いに対してすぐに耐性が生じてその臭いに慣れてしまう(本書では「同じ臭いに対する嗅覚は疲労する」と表現されている。
3)嗅覚はかなり長い時間に渡って記憶される。
うんこ臭とジャスミンの香りが同一であるということはかなり有名な話なので、ご存知の方も多いと思う。単に濃度の違いの問題なのであるから、うんこ臭を良い香りと感じる場面があっても別に不思議な話ではないのだ。これはネットから得た情報だが、3歳児の大半は糞便の匂いを「快適である」と反応するという研究もあるそうで、この反応は成長とともに激減していくらしい。子どもの多くがうんこ好きなのもうなずける話である。
さて、先生の考えたストーリーはこうだ。まずトイレでうんこをする。徐々にうんこ臭が漂うわけだが、最初はその濃度が低いはずだ。すなわちジャスミンの香りなんである。不快に思うどころか、排便したという快感と相まって逆に落ち着いた気分にさえなる。うんこ臭の濃度はどんどん増加するが、嗅覚は同じ臭いに対してすぐ疲労するので慣れが生じる。ある程度うんこ臭が強くなってきても、まだ自分にとってはジャスミンの香りであり続けることができるのである。ましてや自分のうんこの臭いは長年に渡って何度も自分の脳に記憶として刻み込まれており、脳も自分のうんこ臭に慣れているのである。
ところがいったんトイレを出てうんこ臭から離れると、嗅覚の疲労は回復する。この状態でトイレに戻り、いきなり濃度の高いうんこ臭を嗅ぐと、たとえ自分のうんこ臭といえども、脳の記憶を凌駕してしまい不快に感じてしまうのではないだろうか。
しかし、この説明でも、やはり出したてでゆっくり臭ってくれば、他人のうんこも平気なような気がする。そこは、食生活や体質の違いによって修飾された自分のと違う臭いに、やはり脳が慣れていないからということで説明できないだろうか。
不完全燃焼のまま話が変わって申し訳ないが、外崎教授の研究に、臭いと体内の抗酸化物質の関係に関するものがある。芳香は抗酸化物質を増加させるというデータは、良い香りがストレスを癒すというアロマテラピーの科学的根拠として評価されるデータだ。ところが話はこの先が面白い。芳香による抗酸化物質の増加は一時的なもので、あまり長く続かないそうである。逆に嫌な臭い(むれた靴下の臭い)を嗅ぐと、抗酸化物質は減少しそうなものだが、それほど減少しないそうである。それどころか、嫌な臭いから解放されたときの抗酸化物質の増加は、良い香りを嗅いだときよりもむしろ大きく、長く続くんだそうである。この話はDIMEのインタビューでも詳しく書かれていたのを読んだことがある。
この話が本当だとすると、心地よい香りを嗅いでから仕事にとりかかるよりも、強烈なうんこ臭を嗅いでから仕事をした方が能率が上がるんじゃないだろうか。そして、それが本当のアロマテラピーなんじゃないだろうか。うんこ臭には、まだまだ解決すべき謎と期待すべき役割が隠れているような気がしてならない。













Comments
結論が良いなぁ。
掃除機の排気とか臭い好きだとかいう話ありますね。
きっと,シアワセだなぁ
http://prof.suemeweb.com/log/eid122.html
http://prof.suemeweb.com/log/eid124.html
http://prof.suemeweb.com/log/eid6.html
あと、ロケットサラダさんのいうように、愛とうんこ臭の関係というのは大事な目のつけどころです。先生はどうしても生理学的なアプローチをしてしまうんですが、こればっかりは、生理学だけでは解明できないと思います。次回は、ちょっと違う分野からの科学的アプローチについて触れる予定です。
自分で書いておいてひどいコメントですね。ご気分に触りましたら削除してください。
嗅覚に限らず感覚というものは経験や記憶によって捉え方が変わってくるものだと思います。
人間は経験的に「うんこ」は汚いものと教わってくるため「うんこ」のにおいを嗅いだ際、そのように感じてしまうのではないでしょうか。自分のうんこについては、排便の度に不快感を感じていてはしょうがないですよね、ということで「排便」と「不快感」は繋がらないことになります。
もちろん強烈な刺激臭や度を超えた匂いには体が拒否反応を示すでしょうが、「うんこ」はいい匂いと教育されていれば抵抗はなくなると思います。
駄文で申し訳ありません