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● スモーク・オン・ザ・ウォーター問題

先のスモーク・オン・ザ・ウォーター(日本語吹き替え版)で先生は次のように言いました。

1971年、モントルーでのフランク・ザッパ&マザースのライブで、観客の一人が銃を乱射して火災事故を起こしました。

ところがコメント欄で北のSL先生から、「銃の乱射ではない。フレアガンとは溶接器のことで休業中のホテルの修理中に火事を出した話である」とのご指摘がありました。そういえば、先生がディープ・パープルをカラオケで歌ったときに何か説教受けたような気もします。

そこで今日は、この71年のカジノ・ドゥ・モントルーの火災原因について考察したいと思いますが、もちろん先生のソースはウソだらけのネットしかありませんので、そのつもりでお読みください。

まず、スモーク・オン・ザ・ウォーターの歌詞の問題の箇所と王様の訳詩を見てみましょう。

Frank Zappa and the Mothers
Were at the best place around
But some stupid with a flare gun
Burned the place to the ground
Smoke on the water, fire in the sky

フランクサッパとマザーズ
偶然ライブをやっていた
ところがどっかのアホウが銃を撃って
あたりは火の海さ
湖上の煙、火の粉がパチパチ

この訳詩を見ますと、だってあのザッパのライブですよ、狂気に満ちた熱狂的なファンが銃を乱射するという、いかにもありそうでドラマティックな様子が目に浮かぶじゃありませんか。

■フランク・ザッパ - Wikipedia

1971年、モントルーでライブを行っていた際、観客の一人が銃を乱射して火災事故を起こしたことがあり、レマン湖の対岸でそれを目撃していたディープ・パープルの代表曲「スモーク・オン・ザ・ウォーター」にこのエピソードが引用されている。

ね、先生はこの記述を引用させてもらったんですね。

■スモーク・オン・ザ・ウォーター - Wikipedia

この曲はアルバム『マシン・ヘッド』の製作中における実際に起きた放火事件を題材にして作られたものである。

ここでは「放火事件」と表現されていますね。真相はどうなんでしょう。

ところで原文を見るとマザーズがライブ中だったとは言ってないので、王様はライブ中だったというエピソードを知っていて意訳したことになります。なんだ、がっかりだなあ。どこが直訳ロックなんだよ!

谷口先生の以下の訳がかなり原文に忠実だと思われます。

■岩の記憶、風の夢~my United Stars of Atlantis

近くの最高級ホテルには
フランク・ザッパとマザーズがいた
ところがどこかのバカ野郎が火炎放射器でホテルに火をつけ
燃やしてしまいやがった
水面の煙 燃え上がる空

谷口先生はflare gunを「火炎放射器」と訳していますね。

■いかんともしがたいミュージックトリビア【4 ロックレジェンド編】

1971年12月4日のスイスで行われた フランク・ザッパ のコンサートで観客の持ち込んだ花火が原因で火事が起こり、機材が全て焼けてしまった。そのときの ザッパ の火事の模様をレマン湖の対岸を 「きれいだなぁ」 と見ていた DEEP PURPLE の イアン・ギラン はこのときのことを "Smoke on the Water" の歌詞にした。

有名音楽系ブログですが、ここではレジェンドとして、「花火」ということになっています。

いったいflare gunって何なのでしょう。あ、英語版のWikipediaを見てみましょう。

■Smoke on the Water - Wikipedia, the free encyclopedia

a Swiss fan shooting a flare gun in the ceiling, as mentioned in the "some stupid with a flare gun" line

これによると、犯人はやはりライブに来ていたファンの一人で、flare gunをなんとなく天井に打ち上げたっていうイメージです。実は件の flare gunは、そこをクリックするとflare gunの解説に飛びますが、

■Flare gun - Wikipedia, the free encyclopedia

Flare guns may be used whenever someone needs to send a help signal. The flares must be shot directly above, making the signal visible for a longer period of time and revealing the position of whoever is in need of help.

ということで、人々に異変を知らせるために上に向かって放つ照明弾だという解説です。

スイスの観光案内のページではもっと具体的なイメージを湧かせてくれる表現となっています。

■Visiting Montreux Switzerland guided tour

During the show, someone in the audience thoughtfully let off a rocket-flare, which immediately set the ceiling on fire; everyone

観客の一人が"rocket-flare"を放ったとのことです。

ここまでいろいろ調べてきましたが、どうも「銃の乱射」というそれまで先生の持っていたイメージとはかなり違うようです。一方、北のSL先生の言われる「溶接」説もほとんど出てきません。しかし、以下の酔狂居士さんのブログで、溶接説が存在していたことがうかがい知れます。

■酩酊庵の客人: MachineHead

フレアー・ガンとは、溶接銃だとばかり思っていたのだが、インタヴューで、作詞者であるイアン・ギランは、「照明弾だった」と語っている。

え? そうだった、そうだった。こういうことは本人に聞くのが一番です。さっそくそのイアン・ギランのインタビューを見てみましょう。

■Gillan.com - Caramba!-Wordography

Frank Zappa and the 'Mothers of Invention' were onstage and I was sitting in the audience marvelling at the Man and his music. I remember the exquisite harmonies of Flo and Eddie (Turtles) drifting away, as there was a disturbance. I didn't seem much at the time as some guy shot a flare gun from over my right shoulder. I saw two blobs of fire loop across the hall into the top corner.

はい、ここまでいったい何人の読者がついてこられているのか分かりませんが、ここまでお付き合いいただいた方はもうお分かりですね。え?訳して欲しいんですか?しょうがないなあ。

■Gillan.com (日本語版)-Caramba!-Wordography

フランク・ザッパとマザーズ・オヴ・インヴェンションが演奏する間、僕は観客席からこの不思議な男とその音楽に驚嘆していた。フローとエディー(タートルズ)の絶妙なハーモニーがゆっくりと消えていく様をハッキリ覚えている。そこへ騒ぎが起こった。誰かが僕の後ろからフレア・ガン(火炎ガン)を打ったのを目撃しても、そんなに大したことではないと最初は思った。小さな炎の固まりが2つ、クルクル回りながらホールの中を飛んで行き、天井にぶつかった。

ということで、ローリング・ストーンズに借りた移動式スタジオをカジノ・ドゥ・モントルーに持ち込む予定だったんですね。ところがそこはまだザッパが使っていた。たぶん下見がてらに来たイアン・ギランは、なんとそのライブの観客としてその場にいたということになります。そして、彼の背後(右肩)から炎が飛んでいくのが見え、大火災に発展する。空に炎が立ち上がり、湖面に煙が立ち込める様子は、火災のカジノから脱出して対岸の自分のホテルに戻ってから見た光景である。

イアン・ギランが言うにはそういうことになります。おそらく今まで見てきた記事も、彼の証言が元になっているに違いありません。しかし、彼は背後から飛んできた炎を見ただけで、それが放たれた瞬間は見ていないのですから、ファンが放った照明弾だと断定することはできません。あるいは、そもそもイアン・ギランが大ボラ吹きである可能性も捨て切れません。

追記:あきさきさんから非常に貴重なコメントをいただいたので、ここに引用させていただきます。ザッパの自伝の一部分だそうです。

In the middle of Don Preston’s synthesizer solo on “King Kong,” the place suddenly caught fire. Somebody in the audience had a bottle rocket or a Roman candle and fired it into the ceiling, at which point the rattan covering started to burn (other versions of the story claims the blaze was the result of faulty wirings)…
ザッパも出火原因を正確に見ていたわけではないようですが、a bottle rocket or a Roman candleと言っていることから、花火のようなものと考えていたようです。

bottle rocketとRoman candleをイメージ検索してみましたが、たしかにイメージとしては花火ですね。あきさきさんがおっしゃるとおり、ザッパもはっきりと目撃したわけではなく、あくまでも想像なのですが、これでザッパのコンサート中の出来事であったことは間違いないということが分かりました。イアン・ギランさんにおかれましては、あなたをほら吹きではないかと疑って申し訳なかったです。

comments (5) | trackbacks (0) | スミルノフ教授

Comments

北のSL | 2006/12/02 22:09
教授、綿密な調査ありがとうございます。
ザッパのコンサート中の出来事だったのですかー
閉鎖中のホテルうんぬんの話は25年ぐらい前のNHK-FMのロック番組で聞いた覚えがあります。
レコードジャケット(古い!!)の中の写真に煙の出ているホテルの写真があります。あの煙の出ているところで、コンサートやってたのかな?やふーん照明弾か。でもなあ、ギランは大酒飲みだから、インタビューは酒飲みながらのことが多く怪しいんですよ。どっちにしろ、ただのライフルでこんな火事にはならないよね。
スミルノフ | 2006/12/02 23:46
結局全部ギランの言ったことが元になって派生しているようですから、検証のしようがないです。ザッパ一派とかホテル側の証言があればいいんですが、そこまで探せていません。なんかギランが言ったというと、どーも全部は信用できませんよね。パープル派の先生でさえもそうですか。
complex_cat | 2006/12/03 17:45
長年の謎が少し氷解しました。
 私も銃乱射で燃えるってのが,なんでだぁと思っておりました。コードでもぶち切って漏電したのかとか・・・

 事実の検証は完全には無理なんでしょうけど,信号弾ねぇ。今は,もの凄い勢いで情報が欠損していく時代だと思います。Klaatuの符丁をWebでは誰も書いてないのですよ。あと十年したら,こういう話も,Webの膨大な糞データの中に再び埋没していくでしょうね。
あきさき | 2006/12/05 19:41
ちょっと長くなりますが、フランクザッパ自伝"THE REAL FRANK ZAPPA BOOK"より関係箇所を引用します。
...On December 4, we were working at the Casino de Montreux in Geneva, Switzerland, right on the edge of the lake-just in front of Igor Stravinsky Street-a venue noted for its jazz festivals.
In the middle of Don Preston’s synthesizer solo on “King Kong,” the place suddenly caught fire. Somebody in the audience had a bottle rocket or a Roman candle and fired it into the ceiling, at which point the rattan covering started to burn (other versions of the story claims the blaze was the result of faulty wirings)….
ザッパも出火原因を正確に見ていたわけではないようですが、a bottle rocket or a Roman candleと言っていることから、花火のようなものと考えていたようです。
ちなみに、昨日12月4日はザッパの命日です。
スミルノフ | 2006/12/07 23:45
あきさきさん、たいへん貴重なコメントをありがとうございました。ザッパ側の資料はあとで調べようと思っていたので、非常に助かりました。本文に引用させていただきます。おかげで、自分的にはとてもよいエントリーになったと満足しています。

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