先生の地元北海道では、枕を入れていわゆるスニッフィング・ポジションをとったままマスク換気し、クロスフィンガーで開口してそのまま喉頭鏡を挿入して挿管でした。頭の位置は最初に決めるのでツー・アクションにはなりません。約15年間この世で唯一の正しい方法と信じてきたので、海を渡って北陸の地を踏んだとき、先生は我が目を疑わざるをえませんでした。ここでは枕を外してマスク換気を行い、右手で頭を押さえて後屈させ、介助者が軽く下顎を押して開口したところに喉頭鏡を挿入していたのです。
仮に前者をスニッフィング・ポジション法、後者を後屈法とします。先生は当然、最初はこのけったいな後屈法をバカにしていました。これはこの地方独特の方法であって、全国標準とはいえないと。しかし先生だけ違う教え方したところで混乱を招いたり嫌われたりするだけですから、しばらく見守っていたんですね。するとそのうちに、これまで最も声帯が見えやすいポジションと考えられてきたスニッフィング・ポジションが実は後屈法と比べて大差ないとか、後屈した方が口が大きく開くなどといった研究結果が欧米誌に発表されたんですね。また実際に自分でもやってみるうちに、だんだんこの後屈法の良さが分かってきました。確かに口が自然に開くので介助者が軽く下顎を押すだけで済みます。誰も口腔内に指を入れずに済みます。
というわけで、現在はfriedtomatoさんがやらされてるように右手で頭を後屈させる後屈法を標準の方法として採用しています。ところがこの方法はほとんど教科書には書かれていません。清書の多くにはスニッフィング・ポジション法とクロス・フィンガーが書かれています。ですから、予め教科書で勉強してきた研修医や救急救命士にいきなり後屈法を要求すると、眠い先生のとこの若い人のように混乱してツー・アクションになります。
ということで、ここまでの先生の結論としては、地方によって、右手を開口に使うスニッフィング・ポジション法と、右手は後屈に使う後屈法の2種類があり、両者の混乱がツー・アクションをもたらすというものでした。
しかし! どうやらこの結論は大きな間違いらしいです。こーゆー手技の細かいところになると全くお互いに知らないことだらけですな。では、大御所の讃岐先生の監修によるビデオの開口の仕方をご覧ください。
右手でクロス・フィンガーの後、左手で喉頭鏡を挿入し、その後に右手で頭押さえてます。見事なツー・アクション法!←讃岐先生のご指摘のとおり、これは正しくありませんでした。右手でクロスフィンガーの後、左手で後屈、左手で喉頭鏡を受け取って挿入、でした。このビデオでは一度喉頭鏡を挿入してからアングルが切り替わるので勘違いしてしまいました。
この件に関する讃岐先生のリアクションは以下のエントリーにあります。
■msanuki.net 麻酔科医になろうよ!!: 気管挿管時の開口の流儀
ということで、まだまだ他にもいろんな流儀があるんじゃないですかね。右手で後屈させるのは東海北陸地方の特徴だと聞いたんですが、みなさん本当ですか? 他にも違う流儀があったら是非先生に教えてくださいね。


Comments
先生の見事な考察のお陰でツーアクションの原因が理解できました。ありがとうございました。私自身ももう少し後屈法をやってみて、自分なりの答えを出したいと思います。
あー、それから当院には先生の施設で大昔に研修を受けた麻酔科医がいて、見事な(右手)後屈法でクロスフィンガーを行わずに研修医に気管挿管を教えています。いろんな方法があるのを知るという意味では同じ施設にいろいろな場所で教育を受けた指導医がいるというのも有用です。
間違ってしまって申し訳ないです。間違った原因ですが、件のビデオは右手でクロスフィンガーの後左手で喉頭鏡を挿入した場面でアングルが切り替わっているからです。後屈は喉頭鏡挿入後だと早合点してしまいました。本文は早々に訂正します。
いずれにしてもいろいろですなあ。
先生の大変わかりやすい文章で、もやもやしていた頭の中がすっきりしました。
それぞれの方法に良い点がありそうなので、頭をやわらかくして色んな方法を試してみようと思います。