音楽の歌詞を使ったタイポグラフィーによるポップアート。マービン・ゲイの名曲「What's Going On」の一節、「war is not the answer, for only love can conquer hate(戦争は答えじゃない、愛だけが憎しみに打ち勝つ)」の「WAR」と「LOVE」を強調した作品が目に留まり、そういえばこの曲は反戦歌として有名であることを思い出しました。もちろん愛と平和を愛する反戦ブログを運営する先生としては、この作品を手に入れて部屋に飾りたいとまで思いますが、この歌はそれほどまでに明確で直接的な反戦メッセージを発していたのだろうかとふと考えました。
10年以上前、先生は後輩の山崎君に「What's Going On ?」の意味を聞かれ、先生は「調子どお?」程度のただの挨拶だと答えました。山崎君はマービン・ゲイほどの人がただの挨拶を歌にするはずがない、もっと深遠な意味があるに違いないと疑念の目を先生に向けました。しかし、先生は若い頃に黒人ミュージシャンたちと交流があったのですが、彼らは確かに「What's up」や「What's happening」と同じように「What's going on」を気軽な挨拶に使っていました。
これまで出回ってきたこの曲の和訳は、どこか聖霊的で大袈裟に反戦を強調したものが多すぎたのではないでしょうか。たとえば「father」を「神よ」としたり、「What's going on」を「いったい何が起こっているんだ」と訳したり。いや、もちろん、「father」は(後に彼を殺すことになる)彼の父親のことであり、極めてパーソナルな愛のメッセージも含まれているという解釈もよく知られてはいます。当時の知識階級や白人たちの反戦運動を皮肉っていると思われる一節もあり、少なくともフラワームーブメントのような社会現象とは距離を置いた、個人的な思いが歌われているという解釈は彼自身の本意からはそう外れていないような気がします。
先生はやはり「What's going on」は気軽な挨拶、声掛けだと思います。ひとりひとりが触れ合えば争いなど起きるはずも無いのにという、ひとりの男のささやかな嘆きではないのだろうか。これが先生の解釈です。ともすればラブソングに聞こえてしまう流れるような優しいメロディがいっそうその思いを強くさせます。「気軽な」は語弊があるかもしれませんね。「身近な」とでも言った方がいいでしょうか。うまい言葉が見つかりません。最後は「Tell me what's going on, I'll tell you what's going on」となり、ここで身近な挨拶の言葉はただの挨拶を超越します。別に戦争や平和について語ろうというわけではありません。「What's going on」、そして何かについての会話が始まるだけです。反戦は社会活動ばかりでなく、ひとりひとりの胸の内に秘められるような、もっと気軽で身近なものでなければなりません。




Comments
もっとしてほしい。
あれも反戦歌でせうか?
小学生の頃、良く分からないのに国営放送のドイツ語講座で、これの原曲が流れていたので歌ったことを思い出しますぅ