昼休みになった。
「日本のロックを聞くかい?」 僕はきのう日本の友だちから届いたばかりのカセットテープを見せながら、スティーブにそう言った。
「日本にもロックがあるのかい?」
「聞けば分かるさ」と僕は言って、カセットテープをラジカセにセットして再生ボタンを押した。オリジナル・ラブのRAINBOW RACEというアルバムだった。
一曲目はブロンコという曲だ。
■ ORIGINAL LOVE - ブロンコ - RAINBOW RACE
「なかなかいいね」とスティーブはわざとらしく躰でリズムをとりながら言った。「うん、これはロックだね。なんてグループだい?」
僕はバンドの名前を言うのをためらった。通じないかもしれないと思ったからだ。
「オリジナル……」
「え? なんだって? オリジナル、何?」
「オリジナル・ラブ……」
「オリジナル・ラブだって?」
スティーブは僕の目を見つめたまま沈黙していた。しばらく静寂があった。
「変な名前だな……」 とスティーブはつぶやいた。
だがスティーブは曲自体は気に入ってくれたようだった。
「曲はいいよ。本格的なロックだ。ジミー・ヘンドリックスみたいな。おまえ、ジミー・ヘンドリックスは知ってるか?」
「もちろん」と僕はうなずいた。
そのとき、曲も後半にさしかかり、
トゥルットゥットゥートゥットゥットゥー、トゥルットゥットゥートゥッ
というコーラスが始まった。
その瞬間、「おい、ジミー・ヘンドリックスがトゥルットゥルッなんていうかよ」とペンタラスが言った。
「それもそうだな」とスティーブはうなずき、今までわざとらしく揺らしていた躰を静止させた。
「おい、めしめし。めし食いに行くぞ」とペンタラスがスティーブの肩をたたいた。
二人は部屋を出ていった。
二人は僕が日本食の弁当持参なのを知っているので、僕を昼飯に誘うことはない。
僕はこうしていつもひとりだけになった部屋でひっそりと弁当を食べる。
弁当のふたを開けると、あいつらが嫌がるごはんの臭いが部屋に充満した。
オリジナル・ラブのブロンコは僕のためだけにまだ鳴り続けていた。
トゥルットゥットゥートゥットゥットゥー、トゥルットゥットゥートゥッ!
フォクシーの記憶へ続く……

Comments
マンガも不評だし、この記憶シリーズも今一つのようですが、とりあえず今簡単に書けるのはこれらなので、もう少し続けてみようと思います。万人ウケより全国5人の読者のために!
世界でひとりでも読者がいれば続けるブログです。