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死☆BOM ローリー
<プロローグ>
みなさんこんにちは。僕です。僕って誰かって? やだなあ、先生ですよ、みんなのよく知っている先生です。
もう遠い昔のことになりますが、先生がまだ麻酔を教えていた頃、ミオちゃんに「先生にお願いがあるんですが…」と意味深な雰囲気で言われました。先生は、続けて愛の告白がなされたらどうしようかと心配したのですが、そのお願いとは「もっとローリーさんネタを増やしてください」というものでした。ちょっとがっかり。
あれから何年経ったかもう覚えていないのですが、先生は他ならぬミオちゃんのお願いはけっして忘れていませんよ。とっておきのローリーネタです。
この物語の元題は、最初は「麻酔バッグの運命」でした。題名を「死☆BOMローリー」に改名した理由は最後に分かります。本当は、先生と、いや、もとい、僕とローリーの悲しい別れの物語です。僕とローリーは、先生と教え子、というよりは、僕と鼠、のような関係だったような気がします。だから今日は、先生、ではなく、僕で語ることにしよう……。
<Ф>
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- それはまだ僕が麻酔科医で、そして人に麻酔を教える仕事もしていた頃の話だ。僕は古典的な緑色のゴムの麻酔バッグが好きだった。
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- 近頃の新しい麻酔バッグは、こんなシリコン製みたいな白いのが流行っている。でも僕は自分の手のひらにすっぽりと入って、まるで患者の肺の感覚が直接手のひらに伝わるような古いゴム製が好きだった。
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- あまりよく知られていないことだろうけど、麻酔科医は仕事の前に麻酔機器の始業点検をする。特に麻酔バッグの劣化には敏感だ。おっといけない、このバッグは全然膨らまないじゃないか。
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- なんだ、よくみるとバッグのコックが開いていた。これでは酸素が漏れてしまって膨らむはずがない。
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- 開いているコックを……
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- 閉める……
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- ほら、しっかりと膨らむようになった。
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- いや、いかん。このバッグには小さな穴が開いていて、そこから酸素が勢いよく噴出してくる。小さな穴といえども、このまま患者に使用するわけにはいかなかった。

- 数少ない愛着のあるゴム製バッグだったが、穴が開いてしまっては使えない。残念だが捨てるしかないのだ。

- いや、このままゴミ箱に捨てたのでは、誰かが「間違って捨てられている」と勘違いして拾い出す可能性がある。穴の開いたバッグをまた使われたらとても危険だ。念のため、誰が見ても二度と使えないと分かるようにハサミを入れておこう。

- 真っ二つにしてトドメを刺しておきながら未練がましいのだが、やっぱり捨てるのは惜しいような気がしてきた。これはこれで何か別のことに使えないだろうか。そう、たとえば、手術室でかぶる帽子とか……。

- さっそくローリーに試着してもらった。

- さすがファッションリーダーのローリーだ。何でも着こなしてしまう。

- まるで武士を思わせるかっこいい帽子だ。でも、ローリーだからかっこよく見えるんじゃないだろうか。果たして万人がかぶってもかっこいいのだろうか。

- ところが、僕はこの帽子の欠点を発見してしまった。上から見るとバッグの入り口の穴から頭が丸見えなのだ。これじゃ不潔だと至適される可能性も否定できない。

- いや、心配はない。僕の手元には2つに切ったもう一方の切れ端、すなわちバッグの下半分が残っているのだ。こちらはコックを閉めてしまえば完全な閉鎖空間の中に頭をしまいこむことができるのだ。

- いやー、やっぱり似合うねえ、ローリー、と言いながら僕が彼の頭に手を伸ばすと、不思議なことにローリーはひどくおびえた表情になった。

- 僕はローリーがかぶったバッグについているコックに手をかけた。そのときは、自分でも自分が何をしたいのかよく分からなかった。ただそうしたい気分だった、とでもしか説明のしようがない。よく意味が分からなかったが、ローリーは「それだけはやめてください!」と絶叫した。

- 僕の意志ではなく、別の何か大きな力が僕を動かしているかのようだった。僕はコックに手をかけ……

- それをひねって大気に開放した。

- 開放されたコックからは、プシューという大きな音とともに大量の気体が噴出した。

- 気体はとどまることなく流出し続けた。ローリーの顔が青ざめていった。

- いったいこの気体は何なのだろう。ローリーは悲鳴にもならない苦痛に満ちた声を出した。

- ローリーは、しぼんだ。そしてソファーに倒れこんだ。これがローリーとの最後のお別れになろうとは、僕はそのときは夢にも思わなかった。











Comments
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>あや姫さん たぶん今のローリーは一番油がのっている時期かと思います。
>電気鰻さん お久しぶりです。偶然先生も名古屋に行っていたのですが、学会なんてあったのですか? 全然知りませんでした。